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食の提案者が捉える「広める」と「伝える」。飲食の情報発信と、その可能性。

昨今において、業界を問わずその重要性がフォーカスされているのが「情報発信」。SNSを始め、コロナウィルス感染症拡大の状況下で大きく発展したオンラインコミュニケーションツール。多様に展開されるビジネスシーンにおいて、適切かつ効果的な販促を行なっていくことは、もはやNEW  STANDARDとなっている。今回はそんな中、現在苦しい状況を強いられている業界の一つ、飲食業界をピックアップ。飲食店の経営者や、「広める・伝える」ことを目的とする事業体の方まで、食に携わる3名をお招きし、幅広く「情報発信」にまつわる対談をお届けいたします。

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岡田 健吾(おかだ けんご)
料理人 / 起業家
株式会社リジカーレ 取締役副社長 / レストラン【クオーレ】シェフ
2008年より愛知県でレストラン【クオーレ】を開業。2011年に株式会社リジカーレを設立。その他、飲食店の経営、飲食店専門のコンサルティングサービス、飲食店の運営委託事業、出張レストランサービス、チーズケーキの通信販売事業など数多くの食に対してのビジネスを行なっている。シナジー(相乗効果)とストーリー(物語)を一皿の料理や11皿のコース料理、スイーツで表現。フードコーディネーター / ソムリエ / 利酒師などの資格も所有。

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高野 充吉(たかの みつよし)
株式会社32 代表取締役 / 狛江CSAle 実行委員会 代表
地域貢献団体comaecolor 副代表
2013年より狛江市にてイタリアンレストランと撮影業界向けのケータリング事業を行う。傍ら狛江市を盛り上げる団体を立ち上げ、DIYイベントなどを主催。日本ソムリエ協会認定ソムリエ、野菜ソムリエなどの資格をもつ。

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小野寺 力(おのでら ちから)
一般社団法人焼き餃子協会 代表理事 / しかけ株式会社 代表取締役
ギョーザジョッキー
2013年から全国の餃子を集めて焼いて食べるイベント「餃子フェス®️」を開催。2018年に日本の焼き餃子文化を広める「一般社団法人 焼き餃子協会」を設立。全国のおいしいお取り寄せ餃子と餃子の簡単でおいしい焼き方を、テレビ・雑誌・Webサイトなど各種メディアへの出演を通して広める活動を積極的に行っている。餃子製造者と餃子愛好家が集うLINEオープンチャットコミュニティ「焼き餃子研究会」の主宰とともに、毎月セレクトした餃子を工場直送する「逸品ぎょうざ頒布会」のサブスクリプションサービスを展開。一方で、Web制作やデジタルマーケティングを行う「しかけ株式会社」の代表取締役として、プログラミングや制作監督なども行う。

発信しても届かなければ意味がない。変化する情報発信の質と量の関係性。

岡田 私自身、飲食店を経営していますが、その経営もよりサブスク化してきていると思っています。サブスクの本質である「その方が毎月どのサービスに一定対価を払い、利用するのか」という観点は、飲食店に置き換えるとリピーターであり、その中でも特に「新規顧客の2回目来店」がとても重要なポイントになってきます。私の店でも現在、Instagramでの情報発信に始まり、上顧客さまへのDMに至るまで、2回目来店の促進とその先の顧客管理に対してより多くの時間を割くようになってきていて、飲食を提供する以外の重要な業務のひとつとしてまさに根付いてきているところです。

高野 すごいですね!ちなみにLINEなども利用されていますか?

岡田 LINEでは新メニューを毎週発信しています。ご来店の際にお店のLINEアカウントを登録してくださる方も多いので、その方々の満足度をより高められるような発信を心掛けていますね。最近ではYouTubeチャンネルを作成しての発信も始めましたが、そこでは新規既存を問わずにとにかく「ファンを作る」という部分にフォーカスしています。結局はお客様の来店が飲食店にとって一番のマネタイズなので、それを大前提として各ツールをコツコツと運用しています。

高野 特に今ではInstagramが主流なので、より視覚に訴えるメニューであり、いわゆる”映える”要素がすごく重要になってきていますよね。

小野寺 “映える”写真が撮れるかどうかで行く店を決めるのが主流のひとつになっていますよね。

高野 それに傾倒するかどうかは別として改めて重要だなと感じることがありまして、僕は今レストラン業の他にCM撮影業界に向けたケータリングサービスもしていて。広告など一切せずに口コミやご紹介でご依頼を頂くのですが、そのお客さまの8割がリピーターなんです。CM撮影での情報制御の兼ね合いもあり、SNSなどでの発信はできない中で、こうやって仕事として成り立っている以上、いくら情報発信のツールが進化しても、既存のユーザーによる口コミの影響力はとても強いんだなと。

小野寺 私はお二人と違って実際に食べ物を作って届けるのではなく、「餃子を作っている人たちを世の中に知っていただく、そして、作る人と食べる人を繋いでいく」活動をしています。さらに言うと、どこかのお店と契約して活動するのではなく僕が勝手に応援して繋いでいて、全国の知られていない餃子屋さんをもっと知っていただこう、そして、そこにある餃子屋さんの想いを一緒に消費者に届けていこうという活動です。その中で生まれる作っている人と食べる人との間でのフィードバックを共有し合うためのハブとして、焼き餃子協会を作り運営しています。

岡田 僕と全く異なる立場にいらっしゃるので、素直にその活動においてどう情報発信をしているのかが気になります!

小野寺 実はこの活動においては結構アナログなことをずっとやっていて(笑)。まず一つはイベントなのですが、いかに多くの人たちに伝えるかよりも、例え少人数でもそのイベントに参加してくれた人たちの理解度を深めることを主軸にしています。実際には一緒に餃子を焼いて食べるというシンプルなイベントなのですが、そのリアルな体験を通して得た餃子に対する新たな考え方や情報が、焼いて食べる数十分間の間に深く浸透していくんです。そういった体験や情報で餃子がより好きになり、イベントにご協力頂いた餃子屋さんのファンが増えいき、そのファンがまたどこかで「あの餃子美味しかった」と宣伝してくれる。先ほどのケータリングの話に近いですが、規模はスモールかもしれないけど能動的にファンを作り、口コミを生み出す作業をお手伝いするような感じですね。

高野 その上で、小野寺さんはテレビなどでも餃子を発信されていますよね?

小野寺 いくら目的に応じてイベントを企画しても、「あの人誰だ!?」となると集客力も発信力も伴わないので、そのために僕自身まずはどんな人間なのかを能動的に丸裸にすることが大事なことだと思っています。その手段として、テレビや雑誌にて自分であったり、餃子のことや餃子を作っている人たちへの愛を発信することで、自らをキャラクター化しています。マスメディアのパワーを通して僕のハブとしての役割が強化され、発信する情報に信頼性が生まれていけば、「あの人が紹介する餃子だから美味しそう」って思ってくれる方も必然的に増えるじゃないですか。

高野 その通りですね。一方でいくら発信してもそれがどう届いて、どうアクションになるのかは、決して簡単なことではないですよね。それで苦しんでいる飲食業の方々もたくさんいる。

小野寺 そうですね、実際に餃子を作っている人たちが「こんな餃子あるんです」って発信してもなかなか購入に結びつかないです。その理由のひとつには、餃子を焼くのが得意ではない人たちがいることも大きいと思っていて。「こうやったら簡単に美味しく焼けるんだよ」っていう技術をより多くの人たちに伝えることで、ハードルが下がり、消費が促せるのではないかという部分が先ほどのイベントにも通じてくる部分ですよね。それも含めて、”実際にどう作用するのか“という部分を常に考えながら、自身としての発信力とその質を今構築しているところです。

情報を味わう? ストーリーとフードリテラシー。

高野 情報発信の変化に応じて、受け取る側である消費者の変化を感じる部分はありますか?

岡田 情報ってもはや味のカテゴリーの一つになっていると思っている部分があります。例えば、同じものを食べてもそれに対する情報量が多いか少ないかで、感じる味としての感覚が全く違うものになってしまう。レストランで提供時にその料理の情報をシェフかスタッフが教えてくれた経験があると思いますが、その作業があるかないかで、美味しさを感じる度数がかなり変わってくるはずです。うちのお店でもパスタの種類ごとに説明書きのカードを作成していて、それをお客さまに読んでいただいてから提供しているのですが、始めてから分かりやすく食べログの評価が上がったり、メディアへの露出も増えました。口コミをしてもらうのではなく、口コミできる状態に連れていくようなイメージですかね。その実体験も含めて、情報を一緒に食べてもらうことの大事さを感じています。

高野 そのストーリーがおいしさの一端を担っているというのは絶対にありますよね。どこの料理でどんなルーツがあって、みたいな情報が少しでも食べた方の記憶に残ってくれるだけで、それが体験の一つとして共有されますよね。その体験をいかにより素晴らしいものにしていくかが今後の課題だと感じています。

小野寺 僕がやっている事は、作って届けるのではなく、そこにある情報を届けているだけですが、体験を届けているという点で、お二人の内容と同意な部分が多いです。その上で、少し違う視点でお話させていただくと、僕は「共感」と「裏切り」を意識しています。例えば、どんな餃子が好きかという話をするときに、まず初めにご出身を伺ってその地にある餃子屋さんの話をします。すると「あの餃子屋さんを知っているなら、この人の情報って信用できる」と変換されて、そのあとで話す情報がダイレクトに伝わりやすくなります。そこで、「やはり老舗の餃子って長年愛されている理由がありますよね」だったり、「宇都宮の餃子はもちろんですが、北海道や宮崎の餃子は食べたことないんですか?」といった話をしていき、「食べたことのない餃子は実際においしいか判断できないじゃないですか、でもお取り寄せできる餃子って本当に美味しいんですよ」と言った話をすることで、「そうですよね、今度取り寄せしてみます!」といった心持ちになる。こういった共感のストーリーを作ることは必ず意識しています。

高野 マーケティングですね(笑)すごい!

岡田 「裏切り」の部分は?

小野寺 「裏切り」に関しては、餃子を紹介する際に入り口として変わり種を用意して、後からスタンダードなものを紹介するようにしています。それによって、後者の純粋なおいしさがより伝わりやすくなるんです。その振れ幅が大きいほどその人の反応も大きくなるので、良い意味での「裏切り」をいかにをきれいに促せるかを意識しています。

岡田 いかにきれいに裏切るかというの部分はすごく納得です。

高野 リピーターの方がリピーターであり続けてくれるためにも、良い意味での裏切りは適宜必要なのかもしれませんね。例えばレシピにしても、一流シェフのレシピがネットで検索すれば出てくる時代ですから、その均一化の中で継続と変化のバランスを考えながら対応しなければいけないと思っています。

小野寺 実は餃子には「みんなに愛されすぎてしまっている」という弱い部分があります。餃子はどれも同じと思われてしまう傾向があって、料理のメインにならないというか、ブランディングが難しい部分があったんですよね。例えば日本酒やラーメンと比較すると、それぞれ自分の行きつけのお店や商品があると思うのですが、餃子だとあまりないじゃないですか。

岡田 確かにそうですね。あのチェーン店の名前が真っ先に思い浮かびますが(笑)餃子はそういう意味では、少しマニアックな立ち位置なんですかね?

小野寺 今は、マニアックと言われてしまうけど、これが10年後には常識となるように時代を変えていけたらと。その中でも「その地域のそのお店がうまい」みたいなブランディングが各地生まれるよう意識して活動しています。そうなるとやはり、その人自身が発信を頑張ることも大事だけれど、第三者にどう発信されるかが1番重要だなと。だからこそまずは僕が全国の美味しい餃子を発信する第一人者になって発信をすることによって、各店にファンが増えて、その人たちの発信に意味が生まれてくるような、良い循環が生まれることを意識して取り組んでいます。

岡田 飲食業界は料理人が先導してきたので、職人気質の強い人が多い現状ですが、逆に言えば職人ばかりが集まり、起業家が少ないとも言える。その意味でも発信力では、他業界よりとても弱いじゃないですか。例えばホリエモンさんが手掛けた飲食店はしっかり成功していますが、その発信力を活用していきなり飲食業界に参入してもやっていけるし、むしろ話題になる。それが飲食業界の現状だと思っています。

高野 その理由ってどこにあると思います?

岡田 飲食業界は顧客情報を得るのが難しいので、通販等が成立しやすい業種と比較すると、実売から得られる顧客情報に大きな差があります。それが飲食業界の成長スピードが遅い原因の一つになっていると思います。これからは飲食業界でもどれだけ顧客情報を得て、その情報に対してアプローチができるかが必要かつ重要な観点になると思っています。

小野寺 今の話で言うと以前に比べて、スマホ決済やモバイルオーダーによって、個人情報と紐付けながらできることが増えてきてはいますよね。

岡田 確かにLINEとかで注文が入ると少なからず個人情報を得れるので、その方に向けて情報発信はできるんですけど、結局それ以上の事は今のところないんですよね。来店したお客様に向けては、アンケートやLINE登録という活動がメインになってしまう現状なので、そこは貪欲にやっていく必要がありますよね。

小野寺 最近は広告のテクノロジーを活用することで、どこに行って、何をしたかをある程度トラッキングして広告を打てるようになってきているので、そういった方向も考えられるのかも知れませんね。

高野 飲食でも資本の大きいところは既に活用していますよね。ただ、規模が小さく資本も限られるとどうしても限界値が見えてしまうし、悩ましいところです。料理人を目指して修行しても、結果を出すためには料理以外のスキルもセットで必要になってくる現状。簡単ではないなと。

小野寺 今後はテクノロジーが飲食店をもっと変えていけそうですね。テクノロジーをどんどん活用できる業界になっていきながら、来店されるお客さまにある種エンターテイメントとして良い体験を提供することで、その先で個人情報の取得であったり、口コミでの拡散に繋がりやすくなっていくのかなという気はします。そして、確かに料理の腕以外のスキルも求められることに変わりはないですね...。

高野 自分のスマホで手軽に情報を得られる環境になってきている一方で、フードリテラシーは向上していないじゃないですか。例えば、どんな物をどれだけ口に入れることで、身体にどんな影響があるのかというようなことへの関心はまだまだ高くはない。ではどうしてこのような状況が起こっているのかというと、僕らがスマホで気軽に見ている情報はパーソナライズされた「見たい物だけで構成されている情報」だからだと思っています。その精度が向上していけばいくほど、マーケティングの上手い人がどんどんマスを取れていく構造ができてきますよね。

小野寺 高野さんのその考えにはとても賛同できます。僕自身「食」というものは、誰かと楽しむエンターテイメントだと思っています。餃子の餃という漢字も食で交わると書きますが、「食」はコミュニティのハブになるものだと思うんです。特に今はコロナの状況下ということもあり、誰かと集まって食べること自体が贅沢なことじゃないですか。そういった点でも、今までの 食体験とは意味や意義が今後変わる部分が多いのではないかと。つまりは、食べること自体がコロナの閉塞感を打ち破るキーワードになってる気がしています。そういった意味でも僕は「誰と食べるか」という部分に今1番興味を持っていますね。欲しい情報しか得られないという部分でも、自分1人で食べるのではなく、コミュニティで食べていると違う情報や視点が得られるじゃないですか。そういった食べる行為をきっかけにそのコミュニティの重要性が上がってくるのではと思っています。

高野 そのコミュニティが次第に大きくなっていった先にある可能性と、今後の飲食業界におけるテクノロジーのさらなる進化を加味しながら、不可欠になっている情報発信という作業にしっかりと目を向けていきたいですね。

岡田 それぞれ立場は異なりますが、今後も情報交換しながら一緒に戦っていけたらと思います。

小野寺 勉強になりました、今日はありがとうございます。

岡田 ありがとうございます。

高野 ありがとうございました!

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