【照明対談】「あかり」の魅力を引き出す空間の仕掛け人が語る「照明業界」の今とこれから。
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【照明対談】「あかり」の魅力を引き出す空間の仕掛け人が語る「照明業界」の今とこれから。

空間をデザイン、演出する仕事の中でも「照明」に特化した仕事を担う人たちがいる。今回お招きするのは、映像やインスタレーション、プロジェクションマッピングなど、空間全体の演出を手掛ける「株式会社ネイキッド」の佐藤 智則(さとう とものり)さん、建築、空間照明からイルミネーションなどのライトアップイベントまで様々な照明設計・演出をデザイン企画している「u.L.s株式会社」の牛込 慎介(うしごめ しんすけ)さんのお二人。「照明」を「あかり」と捉え、空間と光、その関係性に向き合い続けるお二人に、「照明」という仕事の価値やその想いをお聞きしていきます。

佐藤さんアー写のコピー

佐藤 智則(さとう とものり)
大学卒業後、舞台照明の会社、照明デザイン事務所、照明機器メーカー2社にて照明設計・計画、器具の設計の仕事に携わり、現在は映像やインスタレーション、プロジェクションマッピングなど、空間全体の演出を手掛ける「株式会社ネイキッド(NAKED, INC.)」所属。テクニカルディレクターとして、照明だけでなく、音響、映像のシステム構築や機材のプランニングを担う。

ウッシーさんアー写のコピー

牛込慎介(うしごめ しんすけ)
大学卒業後、LED演出照明の器具メーカーにて10年間、営業から設計、販売、照明に関わる施工監理までを行い、商業施設の演出照明やイルミネーションを中心とした物件を担当。2016年からは株式会社Replaceの設立に参加し、ランドスケープや店舗、ライトアップイベント等の照明計画を担当。2019年、株式会社Replaceから独立し、京都にて照明デザイン設計事務所「u.L.s株式会社」を2019年に設立。建築、空間照明からイルミネーションなどのライトアップイベントまで様々な照明設計・演出をデザイン企画している。

ー 今回は、空間の中でも「照明」に関する仕事に長年携わってきたプロフェッショナルのお二人を迎えて「あかり」の魅力と「照明業界」の現状についてお話を伺いたいと思います。プロフィールを拝見しましたが、お二人とも照明業界歴が長いですね!この業界に入られたきっかけは何だったんですか?

佐藤 学生当時、今はない「SD:スペースデザイン」という雑誌が毎月出ていて、そこで「面出薫(めんで かおる)」さんが設立されたLPA(※1)の特集があったんです。「うわ、これすごいな!」と思ってLPAのホームページを見ると照明探偵団(※2)っていうのをやっていると。でも今から20年前じゃ、東京に行かないとまだ何にも情報がないみたいな状態だったんですよね。もうこれは東京に行かないとだめだと思って、大阪から東京の大学に編入しました。建築学科だったんですが、編入してすぐ「Hyper Tower」という課題が出て、面積の狭い日本では建築は上に積み上げていくしかないのかなぁ、と建築に対して可能性を感じなくなっていたんです。その授業でたまたま面出薫さんが来る時があり、照明を考える機会があって。そこでやっぱり照明の仕事をやりたい!と強く思いました。ただ建築に可能性を感じないのは相変わらずで、何かないかな、あ、舞台照明だ!と思って。それで舞台照明の会社に入ったって感じですね。

※1 LPA(ライティング プランナーズ アソシエーツ)…優れた光環境の創造を通じて建築文化や照明文化に広く貢献するために設立された、光の専門技術集団。1990年に面出薫を中心として設立され、現在は東京とシンガポール、香港を拠点におよそ60名の個性的な社員によって構成されている。建築照明デザインを中心とし、住宅からホテル、オフィスビル、商業施設、公共空間、ランドスケープから都市環境まで幅広い分野の照明デザインを行い、照明デザイン界での先駆的役割を果たしている。
https://www.lighting.co.jp/
※2 照明探偵団…面出薫を団長に、街の光をあらゆる角度から観察・調査するフィールドワークを主体にした照明文化研究会。

牛込 私も大学時代の授業がきっかけでした。大学が環境デザイン学科で都市計画を専攻していたのですが、先生が内原さん(有限会社内原智史デザイン事務所 代表:ライティングデザイナー)でその時の授業でお寺のライトアップの現場に行かせてもらったのがきっかけです。

佐藤 内原さんが先生だったんですね。

牛込 そうです。内原さんは私と同じ京都出身なので定期的に京都にも来られていて。京都の現場の時にお手伝いとして見に行かせていただいたのが、この業界に入るきっかけになりました。

ー お二人は具体的に現在どのようなお仕事をされているんですか?

佐藤 今現在は、一応職種的には「テクニカルディレクター」という名前になってるんですけど。大まかに言うと、プロジェクションマッピングなどで空間演出をするような会社で、照明だけじゃなくて、音響や映像まで全体のシステムを考えたり、機材のプランニングを考えたり幅広く今はやっています。

ー そうなんですね!最近はどのような現場を担当されたんですか?

佐藤 先日ネイキッドサウナ、STAR VILLAGE ACHI × NAKED「Starry☆Sky Camp 2020 -星空キャンプ-」というイベントを担当していました。テントサウナの中を演出するっていうイベントです。

佐藤さん事例_サウナのコピー2

他には、コロナでイベント自体は中止になっちゃったんですけど、弘前城でプロジェクションマッピング「弘前城×ネイキッド 光の桜紅葉」をやっていました。お城にプロジェクションマッピングをするとか、ライトアップイベントですね。橋にプロジェクションマッピングをしたりとか。

佐藤さん事例_弘前城マッピングのコピー

ー すごく規模が大きいですね。これって一人でデザインされるんですか。

佐藤 いや、全体映像を考えるディレクターは別にいて、こういう風に演出したいんだけどって言われた時に、「じゃあプロジェクターをこういう風にしてこうしましょう。照明はこういう風にしましょう!」みたい計画を僕が考えるっていう感じですね。他には、今会社を挙げて「Breath/Bless Project」っていうのをやってるんですけど、うちのアートピースの中にタンポポをモチーフにしたものがあって、東京タワー「Dandelion@東京タワー Breath/Bless Project」と渋谷の宮下公園「Dandelion@MIYASHITA PARK Breath/Bless Project」と秩父のムーミンバレーパーク「Dandelion@ムーミンバレーパーク Breath/Bless Project」にタンポポが立っていて、タンポポの綿毛をふくと世界中に綿毛が飛んでいくっていうのを手掛けています。

佐藤さん事例_タンポポミヤシタパークのコピー2

ー ミヤシタパークの見ました!佐藤さんの会社がされてたんですね!

佐藤 そうです。ミヤシタパークだけは無料だったんですよ。あとは毎年三井ホールで「フラワーズbyネイキッド」っていうのをやってたり、関西だと二条城でVRのイベントをやったり。姫路城でもやったりしてます。

ー ガーデンズ・バイ・ザ・ベイでもやっていたんですか?

佐藤 「Breath/Bless Project」ってイベントはガーデンズ・バイ・ザ・ベイでもやってるんです。ガーデンズ・バイ・ザ・ベイのシンボルであるスーパーツリーの麓にタンポポが立つっていう。一応インスタ映えとかSNSで拡散されることを目指してるので、キャッチーだったり、演出が映えていたりするかもしれないですね。そういうのが仕事です。

ー めちゃくちゃ映えてます。照明メーカーでの仕事とは全然違いますね。

佐藤 そうです。でも僕はもともと舞台照明をやっていたので、系統は似ているのかなと思います。完全に一緒ではないんですけど、やっぱり建築をやっているとプロジェクトのスパンが基本的に長いじゃないですか。商業系は短いけれど、2年とか3年とか、長いものだと10年くらいやってるものもあったりして。メーカーだと誰に向いて仕事をしてるんだろうって思う時もあるじゃないですか。

牛込 確かにそうですよね。

佐藤 そう。結局、ユーザーさんやオーナーさんの反応はなかなか伝わりにくい。設計の人と、「いいものができたね」って話すことはあっても、それを使ってる施主さんから「あーここすごいね!」みたいことを聞くことや見ることって、決して多くはないと思っていて。逆に舞台照明をやっていた時はそれが顕著だったんです。僕はその時コンサートツアーを回っていたりしていたので、僕が照明のボタンを一つ操作するだけで何千人のお客さんが湧くんです。もちろん僕に向けての歓声ではないんですけど、それでも結構中毒性があるというか。

牛込 コンサートのお仕事もされていたんですか!どなたのですか?

佐藤 例えばV6のコンサートとかですかね。僕が岡田くんにピンスポット当てるとみんなが「岡田くん〜♡」って呼ぶのがすごい気持ち良くて(笑)ちょっと岡田くんになった気持ちになるし、すぐにお客さんの反応がわかるっていうのがすごく良いなと思って。

ー 牛込さんはどういうお仕事をされてるんですか?

牛込 今京都で仕事をしているので、古い建物を活かしながら照明をLED化していくお仕事などをさせてもらうことが多いです。企業迎賓館を担当させていただいた時は、築百年の建物に昔からある照明器具を蔵から出してきて電球をLEDに変えて再利用したりとか、新たにダウンライトを仕込んだり。こういうお仕事は非常にやりがいも意義も感じますし、自分自身のやりたかった仕事でもありますね。

ウッシーさん事例2衣笠のコピー2

日本人に元々備わっている「あかり」の感性

ー ありがとうございます。ちなみにお二人とも照明のことを「あかり」と呼んでいて、それが素敵だなと思ったのですが、「あかり」に対する魅力・醍醐味は何でしょうか?

佐藤 照明って言うと、なんか固いじゃないですか。照明っていう漢字もカクカクしてるし、なんか明るく照らすって書きますけど、なんかこう固い感じがするじゃないですか。でも光って形がないものだし、光ってそれだけでは成り立たないもので。発光源に対して光る面があって初めて成立するんですよね。それで例えば舞台照明だと、照明だけで空間が成り立ってしまったりするんですよ。例えば白い光で明るくしたら昼間っぽくなるし、オレンジ色の光で照らせば夕方になる。光の力だけで、空間と時間の関係性を超越することができるんです。それってすごいことだなと思っていて。

牛込 それが「あかり」のデザインの醍醐味でもありますよね!

佐藤 元々、「照明」とか「あかり」って人の手の届く範囲にあったはずなんですよ。それこそ「火」を「あかり」として扱っている時代から。火って自分の管理できるテリトリーじゃないと危ないじゃないですか。だからその手の届く範囲の「あかり」だけだったのが、だんだん大きくなっていって、すごい力を持ち始めて、なんか手に負えなくなっているみたいなところがあるのかなと思っていて(笑)その手の届く範囲のものを照明ではなく「あかり」と呼ぶように僕はしているんです。手元に置いておきたい、照明よりも身近なものっていう意味であかりなのかなって思っています。だから漢字でもなく、ひらがなで書く「あかり」かなって思ったりもしますね。そうすると柔らかい雰囲気になるかなと。

ー 牛込さんはいかがですか?

牛込 私の考えも佐藤さんがおっしゃったことと似ていますね。照明というのは機能的な部分なので明るさや照度を求めて、それが網羅されていたらいいものだと思っていて。「あかり」は日本人に元々備わっていた感性だと思っています。今の仕事をしていて思うのは、暗いとクレームになることがあるんですけど、明るすぎてクレームになることってほぼ無いんですよね。明るかったら明るいほどすごく良いっていう...。

ウッシーさん事例3

この竣工写真、施主さんには「暗すぎる」と言われて、だから光をかなり足すことになって、個人的には台無しになっちゃったなと感じてしまったんです。「あかり」っていうのはやっぱり、その暗闇に美学があるというか、表情があるというか、空間の奥行きがあると思っていて。暗さを否定的に捉えない感性が日本人には本来備わっているはずなんじゃないかと。けれど、高度経済成長期から「明るさ=豊かさ」のようにもなっているし、明るいほど華やかであるかのようになってしまっているから、光を減らす方向の設計作業にももっと価値があるはずなのにな、と思っています。だからこそ、自分の仕事でも、照明を不用意に増やすことなくその空間を効果的に見せるにはどうしたらいいか、日々考えています。「あかり」は感性的な部分で、「照明」は機能的な部分だと私は思います。

ー なるほど、すごく勉強になります。

まだまだ「光」の魅力を伝えきれていない照明業界

佐藤 照明のことってみんな知っているようで知らないことがたくさんあって、その醍醐味や魅力についてもっとお話ができたら、より照明に興味やこだわりを持ってくれる人が増えるのになと思います。例えば、「このお店の光の色味変だな」とか、「あそこの照明一箇所だけ白色混ざってるな」とか。

牛込 そんなのざらじゃないですか?僕は調光カーブが悪いところに泊まりたくないっていつも思っています。

ー 調光カーブって何ですか?

牛込 調光のレベルを変えたときの「明るさの変わり方」ですね。

佐藤 徐々に暗くなってほしいのに、パッといきなり暗くなるみたいな。

牛込 LEDあるあるなんですけどね!

佐藤 僕もすごく気になることがあって。住宅雑誌の自宅特集で、おしゃれなペンダントライトがぶら下がってる部屋の写真があったんですけど、コードが真ん中で束ねてあるのを見て「これはナンセンスだなー!」って。すごく高級なマンションに住んでいるのに、ペンダントライトのコードをそんな見えるところで束ねちゃうんだ!って思って。コードの長さが大抵1.5mついているので、それを高い位置に吊ろうと思ったら、メーカーに頼んで短くしてもらうっていうのがベストなパターンなんですけどね。惜しいなー!とも思いますし、そこにこだわるという選択肢を作ることができていないこともまた事実なんだなと実感しました。

ー 確かにインテリアや間取り、庭の作りなんかにはすごく強いこだわりを持っているのに、その一方で照明にこだわりを強く持っている人は多くないかもしれないですね。「間接照明がとりあえず欲しい!」とか、「ライトのこのデザインが好き」とか、惜しいところまではきていると思うんですけどね!では最後に、お二人の今後の展望をお聞きしたいです。いかがでしょううか?

牛込 佐藤さんがされてる仕事もスケール感的に該当すると思うんですけど、「地域を巻き込んで光で町を変えられる」っていう「照明による町おこし」が盛んになってきています。光って建築でいうとサブのサブで、予算を削られる部分でもあったりするんですよ。もっと一般の方にとって身近な存在になって、「光ってこんな大事なんだ」「光でこんなに景色が変わるんだ」っていう感情が増えていく。そんなお仕事がしたいと思っています。

佐藤 素敵ですね。いつもと同じ帰り道なのに、「あかり」が変わるだけで新しい気付きが得られたり。

牛込 夜に外を歩くのが楽しくなったりね。身近なものの照らし方を変えるだけで、その人の生活にも新しい光を当てられるかもしれない

ー とても素敵です!佐藤さんはいかがでしょうか?

佐藤 光や「あかり」でもっともっと面白いことを仕掛けたいですね。可能性を広げたいし、たくさんの人に新しい景色を見せていきたいです。なにか自分らしい切り口で建築照明に挑戦もしたいですね。

牛込 映像技術の進化やデバイスの進化も著しいので、これまで考えたことも無かったような新しいことも生まれるでしょうし、逆に原始的な「あかり」にもさらに価値が付くような気がしますね。

佐藤 そうですね、僕も具体的にこれだ!というものは無いですが、常に可能性を追求していく姿勢を大事にしたいと思います。

ー これからのお二人のご活躍に注目していきたいと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。

今回対談させていただいたお二人のお仕事、会社の詳細はこちらから。

佐藤智則さん所属の「株式会社ネイキッド」 
https://naked.co.jp/

牛込慎介さん代表の「u.L.s株式会社」
https://uls-kyoto.com/




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