【後編】写真は人生を変える。写真に向き合う2人の考える仕事、そして後世に残る写真とは。
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【後編】写真は人生を変える。写真に向き合う2人の考える仕事、そして後世に残る写真とは。

こちらは対談の【後編】記事です。【前編】記事はこちらからご覧ください。

デジタルデバイスの普及やSNSがますます活発になり、”写真を撮る”という行為は日常のなかで今まで以上に身近なものとなりました。テクノロジーの進化とともに、より簡単に綺麗な写真が撮れるようになった時代。
写真を職業としている馬渕颯太さんと倉本あかりさんに、ご自身の肩書きや写真への向き合い方、思い出の写真についてなど、写真にまつわる話をお伺いしました。

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馬渕 颯太(まぶち そうた)
静岡県を拠点に国内外問わず、出張撮影をするフリーランスフォトグラファー。サッカーJ1リーグチームの元専属スポーツカメラマン。独立後はスポーツ、ライブ、ウェディング、キッズなど多様なジャンル、ロケーションで撮影。映像のような写真を得意とする。

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倉本 あかり(くらもと あかり)
京都府在住。関西を中心にフリーランスとして活動する写真家。人物、建築、店舗などを撮影。ウェディング関係の撮影は横浜・東京を中心に全国で活動を展開しているkuppographyにフリーで関西唯一のメンバーとして所属している。

私たちの存在意義、そして価値とは何か。

ー スマートフォンやデジタルカメラの性能が劇的に進化して、素人でもきれいな写真が撮れる時代だと思っています。そんな中で写真との向き合い方やご自身の役割などで意識されていることがあれば教えて下さい。

馬渕 写真への向き合い方かぁ…。なんて言うか、松岡修造的にたどり着いた答えはパッション! ですかね(笑)。僕らが写真を撮ることを仕事にさせてもらっている理由については、言語化することがすごく難しい質問ですね。それこそ本当にiPhoneのカメラ機能の進化には驚くばかりなので。「フォトグラファー・カメラマン・写真家」って免許も資格も必要ないですし、僕らの存在意義は何だろうって突き詰めて考えてみると、”目の前の景色に夢中になれること”だと思います。当たり前ですが、僕が見た景色がそのまま写真に写るので、僕が本当に良いと思わないとお客さまや第三者に”良い”が届かない。だから、本当に良い写真と思ってもらうことは非常に難しいことだと思っています。

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ー そうですよね、なんとなく分かる気がします。

馬渕 写真への向き合い方という点ではもう一つあって、プライベートでは一切カメラで写真を撮らないんです。

倉本 全く撮らないんですか!?

馬渕 そうなんです、全く。カメラは仕事の道具であって、人のために使う機材というイメージがあって。趣味やプライベートで使ってしまうと自分のための道具になってしまう気がして仕事以外では持たないですね。向き合い方に直結しているかは分かりませんが。

ー 倉本さんはどうですか?

倉本 私も”パッション”って一言で言いたいです(笑)。写真を撮る意味や必要性という点では、自分が関わることでしか生まれないものが必ずあると思っています。声掛け一つで相手の表情も変わるし、それが必ず写真には映るんですよね。私の感情や相手の感情も映るので、相互の関係性がリアルに表れるところが私たちが撮る写真の価値だと考えています。写真との向き合い方に関しては、写真業界でもよく話題に上がっています。映像で撮ってしまえば一番いいところを切り出せるので、フォトグラファーの仕事は減っていくかもしれないという話もよく聞きますし。

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ー どれだけ便利で機能が優れていても、撮る人の掛け声などのコミュニケーションで生まれる表情は変わってきますよね。今のお話を聞いて改めて感じました。

それぞれの思い出の一枚にフォーカス

ー 少し話題が変わりますが、よければ二人の思い出の写真を見せていただけませんか?

馬渕 これはハワイのノースショアというエリアの波の写真です。

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先ほどお話したようにプライベートでは一切写真を撮らないですし、ましてや風景なんて絶対撮ることはなかったのですが、たまたま立ち寄ったカフェで手にとった雑誌に載っていたクラーク・リトル※さんというフォトグラファーの波の写真に衝撃を受けて、「これ、自分も撮ってみたい」って初めて思ったんですよね。その想いを持ち続けていたら、数ヵ月後にハワイで前撮り撮影のお仕事いただいて。「うわっ、撮りに行ける!」ってなりましたね。

※クラーク・リトル:1968年カリフォルニア州ナパ生まれ、その後ハワイ州ノースショアに移住。1980~90年代、ショアブレイクサーフィンのパイオニアとしてその名と才能を広く知れ渡らせる。サーフィンの技術と経験、海への情熱で、その後カメラを手にし、美しく、そして力強いハワイのショアブレイクを撮り始めた。

ーすごい、運命みたいですね。

馬渕 初めて作品を求めるためだけに3~4日間シャッターを切り続けて、”写真で遊ぶ”という感覚を感じることができましたね。この写真を見た奥さんに「コンテストとか出してみたら?」と言われて。今までコンテストなんて考えたこともなかったし興味もなかったんですが、Nikonのカメラ使い始めたこともあって、Nikonのフォトコンテストに応募したらその年のネイチャー部門の準特選をいただくことができました。そんなこともあって、自宅にその写真をずっと飾っていたんです。
それから、昨年の3月末に自分たちの結婚式を挙げたんですが、奥さんがこの写真でオリジナルのドレスを作って着てくれました。この写真を着たいと言ってくれて、ドレスデザイナーさんやクリエイターさんの力を借りながら世界に一つしかないドレスを作ってくれました。

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偶然立ち寄ったカフェで手にとった雑誌の写真がきっかけで、ハワイ行きを願ったらハワイに行けて、チャレンジしたら評価していただけて。その結果、一番近くにいる奥さんに喜んでもらえたという想い入れのある写真ですね。

ー 最高のエピソード過ぎて、もう何も言えないです。

倉本 私、このエピソードの後に写真出せない。パスさせてもらおうかな(笑)。

ー 続いて倉本さん、思い出の写真よろしくお願いします!

倉本 私はポルトガルへ旅行に行ったときの写真が、思い出深く残っています。若い頃は海外旅行に興味を持たなかったのですが、友人に勧められて一度訪れたことをきっかけに、毎年行くようになりました。当たり前ですけど、なんでもない景色や、街の色ひとつ取っても日本とは違いますよね。

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その中でも、ポルトガルのリスボンという街のゲストハウスのようなホテルでの出来事が特に思い出に残っているので、少しお話させてもらいますね。ホテルの受付スタッフに”アナ”という、すごい気さくで面倒見の良い女性が働いておられて、毎日すべてのゲストに対して「気分はどう? 問題ない?」って親切にしてくださっていました。4泊ほど宿泊して次の街に向かう朝、最後にアナの写真を撮りたいなと思ってフロントに向かうとそこにアナの姿はなくて。

ーその日に限ってお休みだったんですか?

倉本 そうなんです。毎日会っていたのに、撮りたいと思ったときに撮らなかった後悔と「あ、もう会えなくなっちゃった。」という寂しい感情が入り混じって、すごくショックを受けました。最後にアナには会えなくて写真を撮ることもできなかったけど、いつも彼女がいたフロントの景色だけでも収めておこうと思って撮った写真が、結果的に思い出の写真となりました。このフロントの写真を見ると、彼女は写っていないけどそこでの出来事をすべて思い出せます。その瞬間は残念に感じた記憶も時間が経ってから思い出すと、いい思い出に変わってきているところが、改めて写真を撮ることの良さとして感じることができています。

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ー やはり写真があるからこそ、旅の思い出の記憶が鮮明に蘇るものですよね。実際に体験していない私たちにもすごく伝わってきました。

写真と向き合う2人の未来像

ー 色々とお話を伺ってきたのですが、改めてこの先10年20年後の自身の仕事に対するイメージや、今思い描いている未来像などがあれば最後に教えてください。

倉本 写真はずっと撮っているだろうなと思います。それが仕事であるかどうかは分かりませんが、仕事でなかったとしても続けているだろうなぁ。それくらい”写真を撮る”という行為が自分にとって当たり前になりました。1枚の写真がきっかけで、性格すら変わるほどに人生が変わったと実感しているので、万人の人生を変えることは難しいかもしれないけれど、1人でも誰かの人生を変えるきっかけになるような写真を世に出すことが目標であり夢ですね。

馬渕 僕もこの先ずっと写真は続けているだろうなと思っています。いろんなご縁もいただけているし、今の僕が誰かの役に立てる武器は写真しかないので。仕事として写真を撮らせていただいている以上、お客さまに楽しんでもらうことや喜んでもらうことは大前提であると考えています。その上で10年後20年後に僕が撮った写真をお客さまが見返した時に「俺、かっこいいじゃん。」とか「私、綺麗じゃん。」と思って欲しいし、家族や友達に伝えたくなる写真であって欲しい。極端な話かもしれませんが、自分が死ぬときに特別な写真が残ることを当たり前にしたいですね。そのためには、写真を撮ってもらうことをもっと”自然なこと”と感じる世の中にしていかなければいけない。プロのカメラマンに依頼をして、プロフィール写真を撮ってもらうってすごくハードル高いですよね? でも、実際はもっと僕らの存在は近いし、気軽に声を掛けてもらえればあなたのために全力を尽くすよと。それくらい身近な存在でありたいですね。

ー 貴重なお話ありがとうございました。

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