見出し画像

【学生対談】大切なのは“妄想力”?建築を学ぶ2人の大学生が考える未来を切り拓くチカラ

ー 今回は現役の建築大学生のお二人、京都工芸繊維大学 大学院生の能村嘉乃(のむら かの)さんと、早稲田大学 学部生の小原美春(おはら みはる)さんにをお招きして、リアルな建築学生の価値観や興味関心、これからの展望について解剖していきます。

画像1

能村 嘉乃(のむら かの)
石川県出身24歳。
京都工芸繊維大学/建築学専攻/修士3年

画像2

小原美春(おはらみはる)
千葉県出身21歳。
早稲田大学創造理工学部建築学科/3年

「建築」 × 「  」 、建築学生の頭の中を覗き見。

edi-libedinsky-1bhp9zBPHVE-unsplash (1)のコピー

ー お二人は建築を学ぶ現役大学生ですが、同じ建築と言っても、学んできた内容も環境も、今興味があることも異なるのではと思います。そこで、お二人の頭の中を覗かせてください!お題は「建築」×「  」。空欄を埋めるとしたら、何が思いつくか伺いたいと思います。能村さんいかがですか?

能村 なんでも掛け合わせられると思うんですけど、個人的に興味があって、足を突っ込むべきだなと思っているのは、「情報テクノロジー」です。というのもロボットやA Iに頼りきるものではなく。今オンラインサロン(*)に入って色々な仕事をしていらっしゃる方とお話しするので、最近のビジネス業界の言葉が急に飛んできたりして、前より聴く機会が増えてきたんです。それこそ「デジタルトランスフォーメーション(DX)」とか「OMO」とか。でも、世の中には浸透しているのに、建築業界、特に学生だと自分から拾いに行かないと全く入ってこない状況だっていうのがよく分かって。「OMO」に関していうと、オンラインが発展すればするほど、オフラインならではの強みが強くなっていくというか、オフラインでないとできないことが、どんどんピックアップされて、そこに人々の価値が入り込むと思っていて。その時にオンラインのデジタルの技術も必要だし、デジタルを阻害するのではなくて、デジタルを使うからこそ、リアルを体験できる建築の良さっていうのがクローズアップされるのではないかと、最近いろいろ見て思っています。
そういう意味でもテクノロジーとの掛け合わせによって、建築がもっと豊かな世界を作れるのではないかと感じますね。例えば、建築をやっていたけれどIT企業や、不動産の業界に絡めると、「え?」っていう雰囲気が少なくとも私の周りにはあるんです。建築の良さを発揮していくには、いろんな領域とコラボレーションして行かなきゃいけないなっていうのは、オンラインサロンに入って余計思うようになりました。小原ちゃんはどうですか?

*オンラインサロン「社外取締役」
建築設計事務所 SUPPOSE DESIGN OFFICE 代表 谷尻誠、BETSUDAI Inc. TOKYO CEO 林哲平、BEAMS コミュニケーションディレクター 土井地博が主宰するオンラインサロン

小原 私は能村さんほど視野広く考えられなかったんですけれど…、私「SF」が好きなんですよ。

能村 おー!!

小原 で、SFって大体ディストピアが描かれるじゃないですか。

能村 うんうん。

小原 私はこうやって、これからのことを聞かれると、ディストピアを考えてしまうんです。今回は世に即したことと絵空事を考えていて。世に即した方は、まさに先ほど能村さんがおっしゃっていた、不動産の方にクローズアップしているもので、建築って芸術とかそういったものよりも、資産としての価値・側面がすごく大きいと思うんですよね。やっぱり、大きなものですし、パワーもあるし。そこを一切見ないっていうのは違うと思っているんです。例えば、そこをもっともっと突き詰めていくと、資産価値が高い建物ってどんな建物かっていうので、この前、成城学園前に安藤忠雄さんの…

能村 売りに出ていたやつ?

小原 そう!それが七億円とか?中古なのに。「あーこれはやっぱりデザイン料が入っているな」と。そういう風に経済波及効果を作る建築とか考えたいですね。他にも都心のオフィスとかで経済効率が良い、お金を生み出せる動線を持つ建築とか。「マネタイズを目的とした建築」っていう考え方があってもいいんじゃないかと思っています。建築×経済、建築×お金っていう。

能村 建築×お金面白いですね!

小原 そうそう。わたし最近までちょっと苦手意識を持っていたんですけど、オンラインサロンに入ってすごくそれがいいことだと思うようになりましたね。

能村 すごくわかる。

小原 もう一つが、「建築」×「遺伝子」っていうことで。相対性理論っていうやくしまるえつこさんのバンドがあって、その人がすごく哲学的に音楽を作っていて、芸術祭とかにも参加しているんですね。その方が自分の音楽のコードを遺伝子にコーディングして、遺伝子の塩基配列に落とし込んで、自分の曲を遺伝子にしてそれを微生物に組み込んで、遺伝子を組み替えてしまったんですよ。そういうことをやっている人がいて。それがすごく心に残っていて、建築もいけるんじゃないかと。建築もパラメトリックデザインとかで、コーディングという手法が出てきているじゃないですか。そういうふうに建築も情報の配列に置き換えられて、それを遺伝子に組み込んでしまったら、新たな微生物ができて生き物が誕生するわけですよ。じゃあもっとSF的に考えると、例えば、「スカイハウスの微生物」と「塔の家の微生物」ができて、その微生物たちが戦うスポーツみたいなのができて…。

能村 半端ない(笑)見てみたい!

小原 e-Sportsみたいな感じで、建築スポーツみたいなのができて、アスリート建築家みたいなのができるとか...

能村 そんなこと考えたことなかった(笑)

小原 私もこのお題をもらったからこそですけどね(笑)

能村 膨らませ方がすごい、めちゃめちゃ面白いね。でも、全ての新しい世界は妄想からうまれているから、そういう、意味のわからない妄想はどんどんしていくべきだよね!

小原 認めてくださってありがとうございます(笑)

能村 一見意味わかんないだろっていう妄想に、私はものすごく価値を感じる。しかも今の時代、変化のスピードがすごく早いじゃないですか。今、電気自動車とか言ってるけれど、言ってる間に車が空を飛びそうだし、Uberなんかドローン配達するとか言ってるし。

小原 だってパソコンすら一般的じゃなかった時代から考えたら、今なんかiPhone12ですからね(笑)

能村 建築って建った時にはもう時代遅れってよく言われるじゃないですか。さっきの話から繋げると、デジタルとか情報とか、建築と比べると、変化のスピードが速すぎる。この変化のスピードに対して、建築はどう付いていけばいいんだろうというか。でも必死に付いていかないとっていうのを感じたり...。

小原 考える人の脳みそというか、設計者側はついていかないといけないなーと思う。ものに引っ張られてちゃいけないなと思って。

能村 そうですね。社会に付いていかないと (笑)

井の中の蛙、大海を知らず。

ー 建築学生の頭の中、すごく興味深くて、ワクワクしますね!お二人ともありがとうございます。そんなユーモア溢れるお二人が、大学でどんな生き方をしてきたのか、お聞きしたいと思います。例えば「建築学生」として「これを経験しておいてよかった」と感じることがあれば教えてください。

画像3

能村 1番大きかったのは「留学」だと思います。留学先はドイツのケルンでした。海外で建築を学ぶとき、日本と比較してみると、教育方針や考え方の違いであったり、設計・形にするまでのアプローチの違いだったり、そういった、基礎の部分を改めて考えさせられるきっかけになりました。もちろん建築での学びも多かったんですけども、同世代の海外の方々とコミュニケーションをという経験が、私にとってはすごく大きかったです。というのも、留学行くまではどちらかと言うと、自分で言うのもなんなんですけど、建築のデザインとか設計をめちゃくちゃ頑張ってきてたというか、そこに膨大な時間を注いでいたんですよね(笑)だから、乱暴な言い方をすると、「デザインさえできれば、他のことはいいや!」みたいに思っていて(笑)でもその考え方は覆されました。あらゆる領域に対する視野の狭さというのを、いい意味で叩きつけられたというか。それは政治に対しても、社会的状態に対しても、各国の事情であったり、環境問題に対しても。いろんな側面に対して、建築が直接関わっていなくても、今後の複雑になる社会において、絶対に必要な視点がたくさんあることを、特に同世代の人たちと話すことによって気づかされました。後は建築以外では、ベタなんですけど、バイトはしてよかったなと思っています(笑)カフェで働いていたんですけれども、コミュニケーション能力とチームをどう率いていくのかというのは、すごく学びになったと思います。結局、建築も最終的にはチームで動くものだと私は思っています。なので違う視点からチームを動かすとか、リーダーシップをとって何か1つのことをやっていくとか、そういう経験は今後生かされると思っています。

ー ありがとうございます。次に小原さんお願いします。

画像4

小原 私がやって良かったと思う事は「サンバ」です。私は踊り子ではなくて楽器を叩く立場なんですけれども、サンバの演奏以外にも、サンバカーニバル自体を作ることにも参加しました。実際に浅草サンバカーニバルにも出場しています。学部1年生のときにはサンバの山車を作る作業員をやり、翌年には自分が山車をつくるリーダーになって、私がチームを引っ張ることになりました。ただ、サンバをやりたい集団であって、山車を作りたい集団ではないので、みんなを引っ張っていくのが難しかったです。とは言え、私も当時は学部2年生で、まだモノづくりに対して何も分かっていないのに、建築学科と言うこともあるし、リーダーと言うこともあるので、でかい顔しなきゃいけないと言うか(笑)分かっていないのに分かっているように振る舞わなければいけないという謎の虚勢もあり(笑)そういうギャップみたいもので自分の無力感を感じました。「井の中の蛙大海を知らず」というか、自分の小ささを実感しながらも、それが結果的に成長するきっかけになったのかなと思っています。あと建築やモノづくり以外にも、音楽や民族楽器に触れられたことや、カーニバルの文化とか、地球の裏側のブラジルについて詳しくなれたのはよかったのかなと思います(笑)

画像5

今、建築学生2人が思う「豊かさ」とは?

ー お二人ともそれぞれの経験の中で、視野や価値観が大きく広がったんですね。そんなお二人だからこそ、色々な選択肢を考えるタイミングにきていると思いますが、今後やっていきたいことはありますか?

小原 私は今学部3年生で、院まで進むと考えると、学部3年生と言うのはちょうど折り返し地点で。後半戦、まずは「企画する立場」になってみたいなという風に思います。サンバやオンラインサロンでのプロジェクト、学校での課題も、全て与えられたことをやっている状態なので、何か自分でオーガナイズをしてやっていくと言う経験がないんですよね。

ー 学生で何にかを企画する機会ってなかなか無いですよね。

小原 したことがあるとしたら飲み会の企画くらいですかね(笑)今コロナウイルスの影響で卒業制作や修士設計などを発表する場が、完全にオンライン上だったりするじゃないですか。そういった発表の場が減っているので、自分で作っていく必要があるなと思っています。そういう場づくりをする練習をしてみたいですね。

ー ありがとうございます。能村さんはいかがですか?

能村 私は「建築だけの建築家」にはなりたくないです。別にそれも1つの姿だけど、自分はそうじゃないなと思っていて。そういう意味で、新しい建築家の生き方や働き方をしたいし、新しい領域を築きあげられる人になりたいなと思っています。

ー 例えば、どんな領域に興味があったりするんですか?

能村 今興味がある事は「不動産」です。建築ってクライアントからこれを作ってくださいと言われる立場だから、その時点で作るべき規模や予算は概ね決まっていて、仕組みとかそういうところにクリエイティブになりづらい環境というか、100%介入し切れないことが多いイメージです。でも最近言われてることだと思うんですけど、そういった仕組みとか、バックグラウンドをデザインすることで、本当に良いものを作れるというか、心地良い場所を作れるんじゃないかという風に私は思っています。そういう時に不動産という領域は、1つ大きなポイントだなと思います。

小原 不動産に興味が湧いてきました(笑)

能村 良いですよね。他の領域としては、ドイツ行った時に、すごく「環境」のことを考えさせられましたね。例えば、「持続可能性」という言葉が一人歩きしているんですけれども、一人歩きしてるとは言え、すごく大事だなと思っていて。私は今24歳だけれども、もし自分が結婚したり、子供が生まれたりして。その子供たちが大人になった時の世界はどうなっているんだろう?と考えると、20年、30年先が見えないというか。その子供たち、さらにはその下の子供たちが大きくなった時のことを考えると、今の美しい自然だったり、美しい景色を持続させていきたいととても思います。「持続可能性」という言葉を、建築だけで担っていくのは難しいことだと思いますけど、その一端をどうやって担っていけるか、今後考えていきたいなという風に思っています。

小原 能村さんは本当に視野が広いし、豊かさを切に願っているというのがとても感じられて良いですね。独りよがりでない感じがとても良いですね!

能村 人によって「豊かさ」の感じ方は違うから、自分の価値観を押し付けるつもりもないし、一人ひとりの理解をするつもりもないけど、一建築家として描く社会像をずっと持ち続けていたいなと思います。そういうのを妄想しながら(笑)

ー 今回、お二人のお話を聞いて、自分以外の領域を知っていくこと、そしてそこからイメージやアイデアを常に育てることの大切さを、改めて感じることができました。お二人とも、本日はありがとうございました!

能村 ありがとうございました。

小原 ありがとうございました!


48
【「肩書き」を通してその仕事をのぞくと、肩書きに捉われない「働く」の動機と本質が見えてくる。】 『THE JOB』は、現代の働き方や生き方のヒント・アイデアをお届けするメディアです。あなたの当たり前が、私の発見になる。そんな気付きのバトンを回していきます。