【福祉対談】福祉業界からハッピーをお届け「タブーと戦うモノたちの軌跡」
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【福祉対談】福祉業界からハッピーをお届け「タブーと戦うモノたちの軌跡」

ビジネス視点がタブーとされやすい福祉業界で、高齢者や障害者の訪問診療に特化した歯科の経営者、そして障害者のグループホームでの管理責任者をしながら福祉従事者の教育にも関わるスーパーバイザーコンサルトという肩書が違うお二人ですが、人材業界から福祉業界にこられた共通点とお二人が不足していると考えるビジネスの視点から今の福祉業界の問題点とこれからのあり方についてお伺いしました。

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■前田伊織
1986年生まれ、美容専門学校卒業後、フリーランスでWEBディレクターを行う。パーソルテクノロジースタッフに転職しエンジニア派遣の営業を担う。結婚を機に妻の地元の三重県で訪問歯科を経営。

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■伊原彰人
1985年生まれ。大正大学社会福祉学科にて障害分野を学ぶ。卒業後、人材会社に就職し3年間ビジネスの基礎を習得。ビジネスで学んだことを活かそうと福祉の道に戻り、福祉施設にて新規施設立ち上げ等に携わる。

もともと福祉に興味あったの?

ー まずはお二人のご経歴と福祉に携わることになったきっかけを教えて下さい!

前田 僕は美容師の専門学校を卒業後、WEBのディレクションをフリーランスで27歳位までやりました。そのあと、IT、システムエンジニアがメインの大手人材サービス会社に入って営業やディレクションマネジメントを行いました。2019年に歯科医師の妻と結婚したのを機に三重県で高齢者や障害者のご自宅に伺って診察をする訪問専門歯科を立ち上げました。それが福祉と携わるきっかけですね。今は歯科医師の妻をサポートする立場として、画一的な歯科医院の在り方を異業種の視点から再構築しています。人材派遣会社で培ったビジネス視点で医院を運営し、ゆくゆくは医療福祉業界が抱えている課題を少しでも解消して業界全体を盛り上げていけたらと考えています。

伊原 僕は厳格な両親に育てられたということもあって生きづらさを幼少期からずっと抱えていたんです。その事と向き合う事で福祉業界に進みたいなと思い、大学から福祉学を専攻しました。学生時代にボランティア活動を通じて福祉業界に足りないものを変革していきたいという思いが強くて。その時僕が感じたのが、電話の応対は出来なくていいとか名刺を持ち合わせていないとか一般社会(現代ビジネス)との常識とはかけ離れた運営状況だったんですよね。業界全体がボランティアではないもっとビジネスとして取り組む必要性を感じました。なので現代ビジネスを学ぶために人材派遣会社に入り営業をしてきました。3年間働いた後、学生時代から続けてきた障害分野で、日中活動支援グループホームなどの活動を行ってきました。共同生活援助に関しては4つのグループホームを立ち上げた経験もあります。今は働く側の教育に力を入れたいという思いがあり、障害者のグループホームでサービス管理責任者等を主にしながらスーパーバイザーコンサルティングの一面を持っています。

「暗い⇒ハッピー」にイメージを変えるための「新3K」

ー お二人とも人材業界から福祉業界に来られましたが福祉業界のイメージはどうでしたか?

前田 施設の暗いイメージってあると思うんですよね。僕もこの業界に入る前から持っていて、施設ごと様々ではあるのですが、実際に暗い施設も多いです。みんなが持っているイメージもあながち間違っていなくて、まだまだネガティブな面もあるなと現状として思います。あと障害者施設ってどこにあるかご存知ですか?なぜか山奥にあるんですよ。人里離れた場所にあるんです。見ちゃいけないもんとか隠されたもんみんたいなイメージがありますね。働いている人はそこに通わないといけないので採用は難しいでしょうし、古い建物が多いので暗い施設になっちゃいますよね。特に障害者系はそういう傾向が強いのかなと思います。なんでなのでしょうね。

伊原 それ答えがあるんですよ。10年前までは、障害者を一般の住宅と離して別の世界を作ろうという取り組みがあって、それが法改正でそういうことをしては駄目だよね。ってことになって住宅街にそういうものができ始めているのが現状なんですよね。

前田 明らかにおかしいですもんね。

伊原 障害が軽度の方であればようやく実家に近い暮らしが戻ってきたと言えますけど、 重度の方だと本当に良く振り回されるっていうのがあって・・・。社会的には改善しているつもりなんだろうけれど、当事者的にはぶっちゃけ振り回されているという状態なんですよね。社会の変化に追いやられて、その土地で自分たちなりの楽しみを築いたのにまた何か振り回されてるよ、みたいな。そういうのがありますね。よく現場で職員は、茶髪・金髪・ピアス・香水もダメ。チノパン・ポロシャツじゃないとダメ。ってあるじゃないですか。 スタッフの個性ということで認めてあげる事で、利用者さんも新しい刺激を得て私もやってみたいとかなるんじゃないかな。もちろん身体介助するのに ゴリゴリのアクセサリーとかやってたら怪我もするのでそれは注意が必要だと思うんですけど。やっぱり、そういうものは世の中的に普通だよっていうのがあって。女性で言ったらマナーとして化粧するような時代じゃないですか。なのに化粧禁止みたいなものもあって。それって面白くないと言うか、気持ち悪さすら感じたこともあって。前田さんが医療分野で働かれている中でも暗いイメージがあるというのはそういうのが強く残っているってことかな。
本当は「この香水どう?」みたいな会話があっても楽しいんじゃないかな。

ー ネガティブイメージばかりが先行していますよね。

伊原 僕はネガティブイメージを払拭したくてセミナーで新3K『かっこいい・健康・給料が変動できる』っていうのを謳ってるんです。「かっこいい」というのは、人とうまくやっていける対人関係のスペシャリストということで、それってかっこいいじゃんと思ったり。「健康」というのは、利用者さんをサポートするのに健康に対しての知識ってのが取り組みの中にあって、 心身ともに健康というところで言うとすごく魅力的だよねというイメージ。あと「給料が変動できる」というのも 確かに業界の水準としてはすごい安いんですけど、視点を変えれば色んなところにビジネスチャンスを感じるので、もっと何をやっていけば給与が高くなるかクリエイティブに考えていく必要があるんじゃないかなって、それを謳ってやってます。

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ー 新3K素敵ですね。お二人は福祉のお仕事をどのように捉えていますか?

前田 僕らは医療なので歯医者さんって若い人は痛い時や治療だけの付き合いというのが多いんですけど、高齢者や障害者になると自分で歯磨きができなかったり、入れ歯を入れれなかったり、リハビリが必要だったりと日常のサポートが必要な方が多いんです。医療として継続的なお付き合いをしていくというのは、訪問歯科と外来歯科で大きく異なってくるのかなと思います。これが、実際働いて院長やスタッフのコミュニケーションを見て思ったのが、かしこまったコミュニケーションが正しいわけではない。例えば、敬語が必ずしも正ではなかったり、「髪型変えて、可愛いねー!!」と敬語を使わず突っ込んだコミュニケーションの方が喜んでくれたりとか、案外人間らしい場面が多いと言うのが、ビジネス業界にいた僕にはカルチャーショックでした。

伊原 僕は、「人生のハッピークリエイト」というのを作ろうと思っています。行政の謳っている福祉サービスは、”障害者手帳を持った人”が対象となったサービスですが、僕の中での福祉サービスはあくまで”全ての人間”の生きづらさなので、海に行きたいけどそれをどうやって実現しようかだったり、友達関係がうまくいかないとか、障害があってその課題に対してどういう考え方をすればいいのか、どういう手段を持ち合わせればそれが軽減できるのかっていうのを考えられることが福祉だと思っています。一般的な福祉サービスを取っ払ってしまえば、僕の中の福祉サービスは全国民に提供できるもので業界関係なく繋がっていられると思うとワクワクします。


どこの業界も当たり前に行う「営業」
「営業」が福祉業界を変えるキーワードとなる

ー 働いている中でチャレンジしている一方、葛藤していることはありますか?

前田 サービス提供の質と量のバランスがすごく難しくて。医療福祉を必要としている人ってすごく多くて需要はどんどん増えていきます。僕らは同業の医院より採用に強いので、応募は多いのですが即戦力は殆んどいません。採用しても育成が追い付かないとサービスの質が伴わなくなる。僕らは医療職なので、健康を害してしまったり悪影響もかなり大きいのでそのバランスを取ることが重要だと考えてます。。今後の課題としてかなり感じています。

伊原 僕も前田さんもおっしゃったように、できることなら専門性の高いスタッフを雇っていきたいんですけど、社員を雇う余力がないというのがあって、パートさんにお願いしないといけない。専門性の高いパートさんなんて都合の良いことはないので、やっぱりそういう方を育てていかないといけない。育てる中で事業所も資金の面で安定した時に、新たに必要な正社員登用をしたいという思いがあるので、実際のところスピ―ド感とのバランスが保てていないという葛藤はありますね。その分現場が自分のマインドとは違う。僕が発信している中で「きれいごと言っているな」とか「それ私はできないし」と思っているスタッフがいるのも日々感じています。そこが難しいですね。

前田 あえて誤解を恐れずに言うなら、高齢者や障害者を対象にしているのでスピード感が業界全体に遅くなりがち、それを加速させるのはめちゃめちゃ難しい気がしていて・・・対象者に合わせて外部的なスピードは上げずに、内部的にスピードを上げるのはすごく難しい。当院のスタッフも、高齢者や障害者のスピードにみんな慣れちゃうと言うか、油断しているとのんびりしてしまう。タイムマネジメントについてはよく伝えます。

伊原 めちゃくちゃ同感です。施設は作っているのに、入りたい人はいっぱいいるのに、いざ見学を進めていくと決定しないんです。もうちょっと先でいいかなとか、もっと悪くなってきたらでいいかなとか言って様子見ちゃう。

前田 新しいことや失敗するのが怖いんだと思うんですよね。二の足を踏む人が多い。

ー なんでですか?

前田 守りはあると思います。80歳を越えてもまだ老後の貯金をしている人もいます。とにかく不安で何かを守り続けている。かといってこちらの考えを無理強いするのは違うので。ただ院としてのサービス展開とは別の問題なので、そこの切り分けはやっぱりビジネス視点がないとスタッフには難しいんだと思います。他の介護施設とかも僕らと同じ課題を抱えているんだと思うんですよね。

伊原 いま僕は株式会社で働いているんですけど、社長と「営業」の話をしていて、一般的な社会福祉法人だとゴリゴリに押さないというか。僕も社会福祉法人にいたのでその経験が長かったのですが、うちの社長はゴリゴリに行くんですよ。めっちゃ営業するし、施設にも営業するし、本人にも営業かけるし。福祉の視点からすれば嫌われそうだなと思うんですけど、自分たちのサービスに自信あって信念持ってやってんだからゴリゴリ宣伝していいんだよって。それを聞いてこの会社に入って良かったって思いました。転職してよかったって。ずばって言っちゃうんですよ。「お母さん、あんたいつまで生きれるの」って、当事者のお母さんに。「あんたいつ逝ってもおかしくないよ、そうなってくると親族に負担をかける」って。そこまで言えるのが今は気持ちいいと思っています。

前田 逆に僕らは「営業」という行為は医療的にNGです。社会貢献とかボランティアという形で当院を知って頂きます。施設で無料の口腔ケアや相談会をして、ご家族や施設の方に見てもらって、依頼を受けたりします。即効性はないんですが、一度広がれば反応は大きいので、地道にそういう活動をやっています。

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ー お二人とも今チャンスを伺っているんですね。

伊原 伺っているというか掴みにいってはいますよ。相手ありきなので自分が求めているスピード感とは違うので、時代が僕に追いつくのを待っています。(笑)

前田 かっこいい!田舎の人は臆病な面がある分、一度決まってからの絆は固くて。特に公共が関わっているような施設だと初動は時間が掛かるけど、いざ動くとどんどん患者さんを紹介してくれたりとか、他の施設を紹介してくれたりとか、田舎特有のツンデレは感じます。実は、市内で僕らと同じ活動をしている所がないんです。似たようなことをしている医院はありますが、知って頂けると専門性や提供するサービスレベルが違います。そこを気づいてもらうまでが勝負だと思います。


「人生ハッピーであれば良い」

ー それぞれ自分たちが切り拓こうと動かれていますが、継続するのって大変だと思います。起爆剤となる根底にある価値観はあるんですか?

前田 僕は訪問歯科診療が歯科医師の新しい働き方になって欲しいと思ってます。まだ開業1年ですが、津市内の歯科で訪問診療数は当院がダントツ1位です。想定していた以上のポジションが確立出来ました。ただ、それは今まで困っている方がたくさんいた証拠でもあります。僕らが診察できる患者さんには限りがあります。今後の目標の一つとしては、訪問歯科診療を自分たちのエリアだけではなく他のエリアでも広げていきたい気持ちがあります。僕らが分院をつくるのではなく、他の歯科医師や開業を考えている方に伝えて、広がっていけばいいなと考えています。
他のエリアで横展開しても再現性の高いサービスだと思うので、当院からの卒業文化が出来れば最高です。

伊原 コラボしたいですね(笑)

前田 それがなかなか難しくて・・・課題として歯科医師しか歯科医院を開業できないという規定があるんですよ。なので僕らの守りとしては、競合がうまれにくいというメリットはあるのですが、広げるとなるとハードルが高くて。歯科業界で訪問歯科診療は下に見られていて、バイト感覚でやるとか引退間際の人がやる仕事というイメージなのでみんなあまりやりたがらない。でも、ちゃんとやれば保険点数も取れるので収入を得れて、土日休みで残業をしなくても医院の経営は成り立つので、本当は広がるべき働き方だと思うんです。なので、僕らが成功事例になって世の中に広がれば、分母が広がって診れる患者さんも増やせると思うんですよね。

伊原 一言でいうと人生ハッピーであれば良い。自由になる為にはそれを勝ち取る努力をしないといけないかなと思っています。福祉みたいに人と深く関わることのできる分野はそうないのでやりがいを感じます。どんなことをしたいか、どんななりたい姿になりたいかを引き出し実現させる!お世話でも奉仕でも無い、この思いを形にして自分の事業所が展開していき、真似する企業が出てくるとハッピーな福祉サービスが増えてくると思うんですよ。あとは自分が福祉タレントとして世に出れたら最高だなと。(笑)芸能人になりたい。僕自身が厳格な両親に育てられたので生きづらさの固まりで、いろんなものを気にして生きてきたので、それを突破らおうぜ!というのが根っこの部分にあるんです。それを吹っ切ってみんなに認められて、悔いがないようにとことん挑戦して自分は死にたいと思っています!YouTubeにも挑戦したいな。(笑)

前田 いいですね!福祉は注目されている分野なので、メディアに取り上げてもらいやすい。当院も開業1年で新聞に3回取り上げてもらいました。社会課題なので貢献できる活動をすれば注目してもらえる業界ですからね。ハッピーな発信を増やしていきたいですね!

ー やっぱり社会に発信することって大切ですよね。福祉業界もHAPPYと思える人が増えていくと良いですね。お二人のご活躍をこれからも期待しております。前田さん、伊原さん有難うございました!


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