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新しい“当たり前”が地球規模の「幸せなループ」を生み出す(前編)

“持続可能な、ずっと続けていくことができる”というのがもともとの意味である「サステナブル」という言葉。昨今では社会活動としても欠かせないキーワードとなっています。
「自然環境保護や社会問題の解決により、経済や社会を持続させる考え方」がサステナブルの定義ですが、どんなことがサステナブルで、何をしたらいいのか理解を深められていない人も多いのではないでしょうか。SDGsとも密接な「サステナブル」について、これから私たちはどう考えていくことができるのか―。
そのヒントを探るべく、今回はキュレーターとして事業を見据えた活動を推進する、みなみなおこさんと、企業広報で環境問題や資源について興味を持ち、個人的に活動も行うミネミキコさんのお話に耳を傾けました。

ナオコ_プロフィール

みなみ なおこ
神奈川県鎌倉市在住。主に製造業の事業や商品のブランディング・コンサルタントの本業に加え、レスプラスチックやアップサイクルに興味を持ち、「サステなブルキュレーター」として自ら実践しながらInstagramやYoutubeで積極的に情報発信を行う。サステナブル事業の立ち上げも目指している。

ミキコ_プロフィール

ミネ ミキコ
熊本県南阿蘇村出身。大学時代のフェアトレードに関する活動を通して、環境や食の問題に興味を持つようになる。製紙メーカーでの企業広報の経験からサーキュラーエコノミー(循環型経済)にも関心を持ち、学び続ける日々。

―最近でこそよく耳にするようになった「サステナブル」の話題ですが、お二人が興味を持つようになったきっかけはどんなことだったんですか?

なおこ 私は鎌倉に住んでいるのですが、2018年に近所でシロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上げられたことがあり、その死因がプラスチックの誤飲によるものだったことが解剖してわかりました。近所の海岸にはごみ箱がなく、観光客がアイスコーヒーやかき氷のごみをその辺に捨ててしまったり、バーベキューのごみがそのままだったり。電子レンジなどの不法投棄も頻発していたこともありました。そんな現実を見てしまった時に、買った瞬間に捨ててしまうような過剰包装など、使い捨て自体がすごく「ダサい」と思うようになったんです。あとは、製造業側がエコな良い商品を一生懸命つくっていても、使う側がまったく興味を引かなかったり、使う側がすごくエコだと思っていても、実際ではそうではなかったり。製造者と消費者と双方の思いや見方がバラバラになっていることが、すごくもどかしくなってきて。両者を繋ぐような働きがしたいなと思うようになって、いろいろと調べ、取り組むようになりました。

―ミキコさんはどんなことがきっかけだったんですか?

ミキコ 私は大学のときに、フィリピンのスラム街のごみを拾って生計を立てている人たちと一緒に、フェアトレードの商品をつくるサークルに参加したことがきっかけです。日本はごみ収集車が集めて「焼却する」という文化がありますが、焼却炉を持たないフィリピンではごみを埋め立てたり、積み上げたりしていて、ごみを拾って生計を立てている人たちもいます。国の文化によってライフスタイルが異なることを現地で実際に目の当たりにし、いかに自分たちがサプライチェーン(※)を理解せずにモノを買っているかということに気付かされ、衝撃を受けました。

※サプライチェーン:原材料調達から消費者の手に届くまでの流れ

身近なものがまったくリサイクルされていないという現実

ナオコ_プラゴミイメージ

―サステナブル初心者からすると、どんなことから始めたらいいのか具体的にわからない部分もまだまだ多いのですが、私たちにとって一番身近で関りが深いものとなると、ごみのリサイクルになってくるでしょうか。

なおこ そうですね。関心が高い人は食品トレーなどの回収にも積極的にしていますね。ただ、牛乳パックは実はリサイクルがそこまでしっかりされていないと聞いたことがあります。

ミキコ そうなんですよ。私、製紙会社の広報で働いていた経験がありまして。紙って日本の中でも唯一、リサイクルの回収ルートが確立されている産業で、身近な存在なのに紙パックの正しいリサイクルの方法や背景などについてはあまりにも知られていなくて。紙パックのリサイクル率は、今回収されている全体の半分ぐらいといわれています。

なおこ そうなんですか! 大量にリサイクルされているイメージがあるのに、少ないですね…。

ミキコ ただ、その中で牛乳パックは学校給食に使われていることもあって、比較的ほかの廃棄物に比べるときちんとリサイクルされているほうです。牛乳パックって何にリサイクルされていると思います?

なおこ また牛乳パック?

ミキコ 実はトイレットペーパーに変わるんです。牛乳パックはすごく質のいいパルプで作られているので、牛乳パックを分解するとキレイな再生原料になるんです。

なおこ なるほど。

ミキコ 牛乳パックのように家庭から出る紙などは、単価の高いものに変えられるのに、きちんと処理をする習慣がない人が多いことがリサイクル率を下げる原因になっていると、私は思います。例えばプラのお弁当の殻は、食べ残してそのまま捨てるし、みんながみんな洗って捨てないじゃないですか。紙パックも同じで、コーヒー牛乳やジュースは中身が入ったまま捨てられるとリサイクルできないんです。ちゃんと洗って、開いて乾かした状態でリサイクルされないと循環につながらない。きちんと処理をしないと、それこそサーキュラーエコノミー(循環型経済)にならないし、本当のサステナブルにはならない。理想と現実のギャップがあります。

なおこ 確かに。プラも「プラごみ」に分別されていても、回収後に洗ってくれているわけでもないので、基本燃えるごみと同じ扱いになってほとんど燃やしていると聞きます。

ミキコ プラスチックはそもそも原料をつくるところから二酸化炭素を排出していて、それをまた焼却するので、必ず気候変動に影響していると考えられますよね。その点、紙の場合は木が成長しているときに二酸化炭素を吸収しているから、燃やすときに出す二酸化炭素と実質プラスマイナスゼロ、「カーボンニュートラル」であると言われているんですけど。そのリサイクルをするためにもエネルギーは必要だし、紙をつくるときにもエネルギーはかかるので、カーボンニュートラルって本当に正しいのかな?と思ったりもします。だから、何気なく使っているプラスチック製品も紙製品も「自分ぐらいなら適当でも大丈夫」と、その場しのぎにしてはいけないと思います。なおこさんはどうやったら無駄なことが減っていくと思いますか?

なおこ 私はそもそもプラを使わない「リデュース」とか「リユース」がもっと広まるといいなと思っています。

ミキコ 私も個人的に容器の使いまわしに違和感はないです。過剰包装も目に余るほど出ていますし、そのほうが気になります。

なおこ そうですよね。私の住む鎌倉は環境意識がわりと高い方だと思うんですが、スーパーでは野菜が梱包なしのものと、1本1本プラスチックの袋に入っているのと2パターンから選べるようになっています。店長さんに聞いたら、今はコロナの感染症対策もあって、選択式にしているそうです。

ミキコ なるほど。今、ごみの量は増えていますよね。特にプラスチック。コロナになる前は、海洋ごみの問題がメディアにも多く取り上げられていましたよね。前職での話になりますが、とある企業が「紙ストローに変えました」というアクションを起こした時に、「本当にそれって紙ストローにする必要があるの?そもそもストローいらないんじゃないの?」といった議論が会社で起こったこともありました。それこそストローも残渣が残るので、リサイクルすることが難しいんですよね。。ただプラスチックの使用を辞めたまでに過ぎないところもあって。導入する企業によっては、お客様に本当にストローがいるかどうかを聞いてから渡す“ストローポリシー”みたいなものを設けられているところもあります。

なおこ ストローポリシーっていうんですね。プラよりも紙のほうが導入価格は高くなると聞きますが、環境的に今、紙業界は売れているんでしょうか。

ミキコ そうですね。紙のパッケージは需要が伸びています。少し前に菓子メーカーが、とある商品で「外の袋を紙にしました」とPRしていたと思うんですけど、あれって外の袋が紙なだけで、中の包装はプラなんですよ。見た目は紙でも中にはアルミが貼ってあって、リサイクルマークは資源有効利用促進法に基づいて、表示が義務付けられているのですが一番使用割合の多い素材が表示されているので、実はプラが含まれているという商品もあったりします。

なおこ それってやっぱり意味ないの?

ミキコ 意味がないというか、リサイクルは難しいですね。紙とアルミがくっついている場合は、紙にリサイクルする時にアルミを剝がさなければいけないんですよ。その剥がす技術が高度で。

なおこ まさにグリーンウォッシュ※だね…。

※グリーンウォッシュ:消費者への訴求目当てに上辺だけ環境保全に取り組んでいるように見せかけること

ミキコ そうですね。「保存期間が短くなる」「水分があるものは入れられない」「においが漏れる」という点が紙のデメリットで、それを少しでも良くするために、技術開発も進んでいるようですが、お店の方々が使用するとなるとやっぱりコスト的に採用が難しい。あとは機械の問題で難しい部分もあります。装置産業の転換っていうのはけっこう課題が多いのが現実ですね。

「昔ながら」と「最新」が融合する日常が一番効率的で、理想的なのかもしれない

ナオコ_モーニングバトンイメージ

ーサイクルが円滑に回っていくために、ごみの回収や資源を守る仕組みとして、どんなことがかなうと、よりよい方向に進められるんでしょうか。

なおこ 日本は焼却能力高いから、そこまで切羽詰まっていないと思っている節がありますよね。

ミキコ 確かに。東京都ってごみの分別がすごく緩いじゃないですか。私、山口県に住んでいたことがあって、山口県のとある市はごみの分別がめちゃくちゃ厳しくて。ごみ袋に名前を書いて出さなきゃいけないんですよ。なおこさんは徳島県の上勝町に行ったことがありますか?

なおこ 超先進都市の! 行ってみたいと思っている町です。分別、何種類でしたっけ?

ミキコ たしか13種類45分別ぐらいですね。

なおこ すごいですよね。上勝町はなるべく細分化するようにしているから、分別することが当たり前になって、ごみを出したくないという文化が浸透し、町おこし的にゼロウェイスト(※)先進国になっているんでしょうね。

※ゼロウェイスト:廃棄物や資源の浪費をゼロに近づける取り組みのこと

ミキコ そうですね。瓶とかアルミとかすごく細かく分別するようになっているみたいで、行政の視察も多いそうですよ。それと、廃棄物を活かしたブリュワリーとかもあって、上勝ビールみたいなものもあり、そこのお店に自分たちでマイボトル持って行くと注いでくれるようになっています。

なおこ いいよね。そういうの。そんな買い物スタイルに変えたい。

ミキコ 昔ながらの量り売り、いいですよね。

なおこ そう! 便利な方法で量り売りがあったらいいなって思うんですよね。量り売りって容器を持ち歩くのが面倒だったり、常に容器を持っているわけにもいかないので、例えば仕事帰りに寄ろうと思った時に、お店で自由に容器を借りられて返せたらいいなと思ったりします。ただ、いつもパッケージ化されているものを買っているから、量り売りになると何グラムいくらなのか、予算の感覚が分からなくなることもあります。いかに自分が何も考えないで買っているかが分かる。

ミキコ 安いか高いか分からなくなりますよね。そういうとき、データ連携してくれたらな、っていつも思います。トイレットペーパーとかでも、家族四人で1パック買った時に、その家族が四人でどのくらいの期間でそれを使い切るのかがデータで取れて、無くなるタイミングで送られてくる、といった仕組みができたらな、と。

なおこ 良いと思う。そういうの欲しいですね。

ミキコ 今後はうまくデジタルも活用して、資源を守りながらモノが回っていく仕組みができてくるんでしょうね。食品も普段使っているものが全部数値化されて、家族何人だとこのぐらい食べるとかこのぐらい減るみたいな。

なおこ いい、それすごくやってほしい。トイレットペーパーからでもいいからできそうですよね。

ミキコ 私はUber Eatsなども、資源を守りながら循環していく仕組みになればいいなと思っています。運んでいる人はそれで生計を立てているわけだから、その人たちがやっていることがもっと循環型の取り組みにはまれば、よりいいですよね。

なおこ そうそう。ミキコさんの今の話と同じで、新聞屋さんの把握している配送網も実はすごく宝で。例えば地元のクリーニング屋さんとかお花屋さんお肉屋さんとかを、Uber Eatsみたいにパッケージフリーで新聞屋さんが配送するという、新聞屋さんにとっては相当メリットになる事業モデルを以前作ったことがありました。新聞屋さんはすごく販路を広げられるし、高齢者の方へのいろんなことへの代行もサブスクでできたらどうかという提案をしました。ただ、うちの会社が全然利益が出ないので、アイデアだけご提案して終わっちゃたんですけど。

ミキコ おもしろい!お年寄りの方はすごく有難いと思いますよ。

この続きは、下記の【後編】「新しい“当たり前”が地球規模の「幸せなループ」を生み出す」へ続きます。ぜひご覧ください!


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