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だから作り続ける。「映画制作」のことと、そこに携わる人たちのこと。


今も昔も変わらずに、映像を通した娯楽として、そしてメッセージ媒介としてそこにある”映画”。どの世代に対しても強く根付き続けるモノだからこそ、魅了され、心を動かされ、そして、自らにとっての表現のひとつとして選択する者たちが生まれていく。
そこで今回は、映画監督としてご活躍されている佐藤快磨さんと葉名恒星さんの対談を通して、「映画制作」のことと、そこに熱意を注ぐお二人のことを紐解いていきます。


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佐藤快磨
1989年生まれ。秋田県出身。
初の長編監督作『ガンバレとかうるせぇ』(14)が、ぴあフィルムフェスティバルPFFアワード2014で映画ファン賞と観客賞を受賞、第19回釜山国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされるなど、国内外の様々な映画祭で高く評価される。
文化庁委託事業『ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2015』に選ばれ、『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』(16)を監督。その後、『歩けない僕らは』(19)などを制作している。『泣く子はいねぇが』(20)が長編劇場映画デビュー作となる。

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葉名恒星 
1992年8月11日生まれ。広島出身。
東京学芸大学表現コミュニケーション専攻を卒業後、ニューシネマワークショップを受講。
現在は、フリーランスとしてCMや企業映像のディレクターを勤めながら、映画制作活動を行っている。
初作である『愛うつつ』が2021年5月、ユーロスペースにて公開予定。
また、2作目である『きみは愛せ』(カナザワ映画祭「期待の新人監督スカラシップ」第一回作品)が2021年に公開を控えている。


それぞれの映画への入り口とは


何か映画制作を始めるに至ったきっかけはありましたか?

佐藤さん:
今もどうして映画を作っているのか自身でわからないくらい、それまでの人生の中で映画を通ってきていないんです。
当時サッカーをやってたこともあり好きだったNIKEのCMとかを広告代理店に入って作りたいと思ってたものの、「君、でも映像やったことないし」って言われて当然のように落とされてしまったことが、強いて言えばきっかけのようなものになるのかもしれませんね。
それなら映像をやってみようと思い、ダブルスクールの形で早稲田にある映像の学校に通い始めたことが直接的なスタートにはなります。

映画に出会って良かったと思いますか?

佐藤さん:
そうですね。映画に出会えて良かったというか、サッカーしかなかった当時の自分に対して、サッカーに代わるものは映画だと無理矢理言い聞かせていた部分もあるのかもしれません。映画学校で初めて映画を作ったのがとても楽しかったので、続けていこうと素直に思えました。

葉名さんは何かきっかけのようなものはありましたか?

葉名さん:
僕は、佐藤さんや先輩たちのような、自分の周りにいる方達に影響を受けました。そして、佐藤さんと同じく特別たくさん映画は見てこなかったですね。大学卒業後、一度人材紹介会社に就職して営業職に就いたものの3ヶ月で辞めてしまったのですが、それを機に佐藤さんの家に遊びに行く機会が増えまして。その時に佐藤さんやその周りにも映画を通して自分がやりたいことを表現しようとしている人たちを目の当たりにし、そんな素敵な世界に入りたいと思ったことが映画への入り口でした。

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そして、映画は生まれていく

日頃の映画の創作活動において題材やテーマはどのようにして決めていますか?

葉名さん:
何よりも”嘘を付かない”ということを大切にしています。自分が知らない世界のことを勝手に創造してある種の嘘を用いて表現しても、それは誰かを馬鹿にしていることと近しい感覚になるような気がしています。なので、自分に近いところにある経験からそれを少しずつ広げていくという作業をしているのかもしれません。

佐藤さん:
僕の場合、毎回テーマに関して聞かれると困る感覚があるので、どこかこじつけてる部分があるんだと思います。当初は自分自身のことを題材にしていたことが多くて、自分が生きていた中で残ってる未練や後悔から起草していましたが、やがてそれも枯渇してきて。次第に「こういう場面や感情の時に、この人は一体どういう顔をしてるんだろうか?」と人の表情から思い描いたり逆算して、組み立てていくことが今では多くなったように思います。
「佐藤くんはディスコミュニケーションと最後爆発するナルシズムを撮ってるよね」と先輩に言われたことがあり、最初はそれを意識していたのですが、次第に世の中のどの映画もそれに近しいと思い始めて。”自意識がどう変化していくか”のような部分も含めて、ディスコミュニケーションも対人とのコミュニケーションな訳なので、そこを突き詰めていくと結局は表情であり、顔だなと思っています。

やはり四六時中映画のこと考えている?

佐藤さん:
僕は胸を張って「四六時中考えています!」とは言えないです(笑)。何なら麻雀のMリーグのことをすぐ考えてしまう毎日です、、、(笑)。
映画って企画してから撮影して公開するまでに最短でも3年くらいかかる上に、同時並行で何本も撮っている方も多くいるので、その方々と比べると自分は全然努力が足りてないし、Mリーグじゃなくて企画のことを考える時間をもっと作らないといけないとは思っているのですが、、、。

葉名さん:
佐藤さんの麻雀のようなエピソードがなくて申し訳ないのですが(笑)、1日の終わりにその日にあった嬉しかったことや楽しかったこと、イラッとしたことなどをノートに記すようにしています。日記じゃないけど、一言二言の内容で、映画学校を卒業してからずっと書いています。
例えば、「冷蔵庫を開けたら買ったはずのプリンがなくなってた、クソ!」とか、「そういう観点から、ある人にこういうことを言ったら、意図に反して伝わってしまった」とか。意外と細かくメモしています。

佐藤さん:
日頃過ごしている中にこそヒントは多いですよね。

葉名さん:
ヒントは多いですね。人の笑い方とか、仕草の面白い人とか、1日生活していて記憶に残ることは誰しも必ずあると思うんです。現在ルームシェアをしているのですが、同居人に独り言が多い人がいて、その独り言を毎日書き留めていて。いつか使えるんじゃないかっていうより、単純に面白いから書き留めています。そういう意味では、結果としてヒントにはなっているものの、日常のインプットはインプットとしてあまり意識していないからこそ良いのかもしれません。

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映画監督としてこれまでに挫折した経験などはありますか?

葉名さん:
自主映画は予算がないとシワ寄せが誰かにいく。自分が苦労する分にはいいのですが、映画を作って誰かを救えればと思って作っている映画で、近くのスタッフにしわ寄せがいってるのを見ると苦しくなります。
僕の勝手な考えかもしれませんが、予算があって、それに見合ったお金があるからわがままが言えるんだと思うんです。僕が普段作っているような低予算の自主映画だと、僕だけでやるのには限界があって、近くの人にとてもシワ寄せがいってしまう。モチベーションだけでは何ともならない辛さやストレスに潰れてしまった子が現場にいたことがあるのですが、“この映画で救われる人がいたら”と思って作っていたのにその人を潰してしまった以上、とても苦しかったですね。

佐藤さん:
僕は運よく、これまでに大きな挫折はないんです。30代前半で商業映画の公開まで辿り着けたこれまでの道のりは、かなり恵まれている方だなと思っています。
大学を卒業して、24歳の時に撮った自主映画がぴあフィルムフェスティバルにて入選し、そこから定期的にターニングポイントとなる作品が撮れているので、ありがたくもここまでは順調に歩むことができています。
でも、ぴあフィルムフェスティバルで入選したからといってすぐに仕事のお声がけを頂けた訳ではないので、結局はどこまで行っても自分で企画を立てて、面白いものを撮り続けないと次がない世界なんですよね。やることはシンプルだし、だからこそ面白いなと思いますが、誰と組むのかとか、どう稼いでいくかという部分に注力しすぎると、作品としてブレたり、逆に苦しくなっていく。
もちろん現場でのスタッフさんや俳優さんとの人間関係の部分での難しさであったり、環境や予算の部分でも悩ましいことは多々あるのですが、そういう精神的に辛い経験だったりは僕にとっては挫折ではないんです。映画監督という仕事に対して、挫折と言えるほどのことを僕の中ではまだまだやり切れてないと言いますか。
それを商業映画を1本撮ったことで余計に痛感しました。他の監督はもっとやってるし、もっと映画を見てきているし、もっと映画を愛していると思うので、追いつかなければというか、自分が足りていないとは常に思っています。

憧れる監督さんはいますか?

佐藤さん:
憧れているのは、『リンダリンダリンダ」の山下敦弘監督です。映画学校に入ってすぐに『リンダリンダリンダ』をおすすめされて、「こんな映画あるんだ!」とドハマりして、そこからずっと憧れの監督です。脚本家の向井さんという方とずっとタッグを組まれて自主映画をやられているのですが、向井さんの書く脚本もすごい好きで勉強したりしていて、勝手に2人に影響を受けています。

葉名さん:
僕は、憧れというか、言葉を吸収させて頂いているのは、足立紳監督や山下敦弘監督、三木孝浩監督や同郷の西川美和監督ですね。
でも、一番近くにいて、大きい存在は佐藤さん。

佐藤さん:
そう言うのはいらないよ(笑)。

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これからの映画制作への想いは

今後作ってみたい映画などはありますか?

葉名さん:
僕が広島出身なので、広島の映画を撮りたいなとはずっと考えています。被爆2世や3世は昔からずっと近くに感じていた事もあるのですが、例えば、”原爆の被爆2世と3世”を題材にした映画で、直接的にその時代に生きてなくても生まれながらにそこにある背景をどのように抱えていくかということを撮ってみたいです。被爆者は、2世、3世、4世と続いていく訳ですが、この間の東北大震災でも被曝者が出て、ものすごく差別が起こってしまっている。さらには、福島からの移住先での差別やいじめもあります。そこには、広島の被爆者や被爆2世・3世が直面した問題とかなり近いところがあって。同じことを人は繰り返すのかと。そういった部分を調べれば調べるほどコミュニティの課題はあると感じていて。だから、自分の目から見た世界で、自分と同じ世代の被爆3世を軸にした話を撮りたいですね

佐藤さん:
僕は、自分が見たことのないものを見たい。先ほどの話にもありましたが、見たことのない顔を見たいという欲求のようなものは強くあります。その人の内側に少しでも触れたいというか、内側に触れてその顔を見て、自分が感動したいという想いが正直に自分の中にずっとあるんじゃないかと。そう言う意味では、人を感動させたいという言葉は、自分には相応しくないというか嘘くさく聞こえてしまって。それは自己満足じゃないかと言われたらそうかもしれないですが、映画を撮る上では自分自身が感動したいという部分が1番強いのかなと素直に思っています。
自身の作品である「泣く子はいねぇが」も現場で心が震えていたし、出来上がったものを見たときにもとても感動しました。そういう映画を撮り続けられたらいいなと思っています。

葉名さん:
自分の映画撮りながら現場で泣いてることは僕も多々あるのですが、カメラマンから「何コイツ。何泣いてんだ」と見られると怖い(笑)。

佐藤さん:
それ分かる(笑)。「お前が泣いているほど良くないぞ」と思われていたら嫌だし、そこが紙一重だから怖いよね(笑)。
特に僕が駆け出しのぺーぺーの頃、どうやって現場を引っ張っていくかを考えたときに、監督の熱意や前のめりになっている姿勢がないとベテランスタッフやキャストの皆さんを引っ張っていけないよなといつも考えていました。ただ単に人となりとか人間関係が良いだけでは、信頼関係はなかなか生まれてこない訳で、そのためにどう自分を見せていくかは、それぞれの監督が考えていかなければいけないこと。その内の1つとしても熱意というのはとても大切な要素なので、全身全霊で号泣するくらいのことがあっていいと思う。

それでは最後に、お二人にとって映画とは?

葉名さん:
見ても撮っても正直になれるもの。そして、自分に嘘をつかずに、正直にいられるものです。例え友達や尊敬する先輩方が「この映画は面白くない」と言ったとしても、自分が感動して泣いたのだとしたらその映画と出会えて良かったと思えるし、そこでその自分の感情に嘘をつけばつくほど苦しくなっていく。その事象や物語、事件とか自分の感情も含めて、自分と正直に向き合っていけるものですね。
何より、格好付けた映像はそこに関わる人や見た人たちにバレると思っていて。
とは言え無意識に格好付けてしまうことはありますが、ダサい部分も含めて格好付けずに見せれる方が絶対良いもの作れるという想いがある。

佐藤さん:
僕にとっては、自分の外側に光を当ててくれるし、さらには内側にも光を当ててくれるもの。外側の見えなかったものを見ることでそれが自分に跳ね返ってくるというか、自分に忘れていたものを思い出したり、知らなかった感情を呼び起こしてくれたりするものですね。
今でも映画を見て見たことのないものを見せてくれる機会は多々あるし、今まで暗闇だったところに光を当ててくれるような機会も多々あります。それが自分に跳ね返ってきて、自分の感情にちゃんと光が当たるというか、自分が見えてなかったものに光が当たるというか。そういう映画を見ると、見て良かったと思うし、ずっと自分の中に残りますよね。

葉名さん:
確かに、映画を見たことで呼び起こされた感覚とか感情ってあるよね。

佐藤さん:
それと、意外と忘れていたことを思い出すこともある。その映画を見なければ、その記憶は忘れられたままだったかも、ということに気づく良さみたいなのってありますよね。知らなかったことを知るということもすごい大切だと思いますが、忘れていたことであったり、どうでもよかった記憶を思い出して、「あ、これ実はどうでもよくなかった」と思えることのほうが大事だと思ったりします。映画の温度というか、温かみがそこにはある。温度が伴ってる何かを想起させる映画を撮りたいし、見た人にそういう体験をして頂けたら素敵だなと思います。

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泣く子ポスタービジュアル

ブルーレイ展開図


佐藤快磨さん監督作品
「泣く子はいねぇが」

<ストーリー>
秋田の男鹿半島に暮らす若者のたすくは、子供が生まれても父親の自覚を持てないでいた。そんなたすくに妻のことねが愛想を尽かしていた矢先、全力疾走する全裸のナマハゲがニュース番組の生中継で放送される事件が発生。その正体は、泥酔しきったたすくだった。

■監督・脚本・編集:佐藤快磨
■出演:仲野太賀 吉岡里帆 寛一郎 山中崇 /余 貴美子 柳葉敏郎
■制作:AOI Pro.
■配給:スターサンズ/バンダイナムコアーツ
■企画:分福/是枝裕和
■コピーライト:『泣く子はいねぇが』製作委員会
5月26日(水) Blu-ray(特別限定盤) & DVD 発売予定
https://nakukohainega.com/

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葉名恒星さん監督作品
「愛うつつ」

<ストーリー>
愛するがゆえに恋人を抱けない男と愛しているからこそ抱かれたい女を描く人間ドラマ。人材会社営業職の新田純は付き合って7カ月になる大学生の白井結衣と仲睦まじく過ごしているものの、結衣とセックスできずにいた。ある日、結衣が純の秘密を知ったことから、2人の愛の形の違いが浮き彫りになっていく。

■監督・脚本・編集:葉名恒星
■出演:細川岳/nagoho/佐藤岳人/井上実莉/黒木克幸
■制作:HANAOHANACO Co.
■配給:イハフィルムズ
■企画:葉名恒星
■コピーライト:(c)HANAOHANACO Co.
5月29日(土)よりユーロスペース(渋谷)にて公開予定
https://aiutsutsu.amebaownd.com



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