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【宿泊施設対談】「泊まる」をデザインする3人が語った、「ホテル」を解体していく可能性。

今回の対談は、泊まれる本屋「BOOK AND BED TOKYO」の立ち上げを始めとした多岐にわたるクリエイティブを行う「known unknown」の力丸 聡(りきまる そう)さん、インテリアデザイン等を行うデザイン事務所「M8 design studio」の松尾 政人(まつお まさと)さん、コミュニティホテル「エンブレムホテル」のプロデュース・運営などを行うホテルプロデューサー「(株)リンナスデザイン」の松下 秋裕(まつした あきひろ)さん、以上3名をお招きします。ホテル事業のプロデュース・運営・経営のポジションに立つ3名が「ホテル」を語り尽くす

PROFILE りきまる

力丸 聡(りきまる そう)
クリエイティブチーム「known unknown」所属。泊まれる本屋「BOOK AND BED TOKYO」の立ち上げ、運営統括(現在はクリエイティブのディレクションのみ担当)。その他にも、JR東日本東京感動線プロジェクトの映像制作やSNS戦略策定と制作、アパレルメーカーのコミュニケーション戦略立案と制作を行うなど、クリエイティブとコミュニケーションプランニングを軸に活動。

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松尾 政人(まつお まさと)
店舗のインテリアデザインを主軸に行うデザイン事務所「M8 design studio(メイトデザインスタジオ)」を設立。また、事務所と並走する形でオルタナティブスペース運営、輸入建材セレクトショップ、宿泊施設運営などを行う建築起業家。

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松下 秋裕(まつした あきひろ)
不動産会社で不動産運用業務を経て、コミュニティホテルを運営する「エンブレムホテル」の創業メンバー。2020年、ホテルの運営・プロデュースを行う「株式会社Linnas Design (リンナスデザイン)」を金沢で起業したホテルディレクター。

ー 今回はみなさんに「宿泊施設とは?」をテーマにお話をお聞きしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。それではまず、それぞれのプロフィール、お仕事内容についてお伺いできますでしょうか?

力丸 力丸 聡、39歳です。20年近くクリエイティブディレクターをしてきました。その中のプロジェクトの1つとして、泊まれる本屋「BOOK AND BED TOKYO」の立ち上げからスタッフの採用・教育、運営といったディレクションまでを5年間行ってきました。今年の10月末に一旦BOOK AND BED TOKYOのディレクションは離れ、今はクリエイティブ関連のみを見ており、他のクライアント案件に携わっています。

*ディレクションとは
事業やプロジェクトの指揮や管理を行うこと。

松尾 店舗デザインの仕事をメインで行う個人設計事務所、「M8 design studio(メイトデザインスタジオ)」を経営しています。今年の2月(2020年2月)に独立しました。店舗デザインが主軸ですが、貸スペース運営、民泊施設の運営を約2年ほど行っています。最近は展示会の企画を自分の職場スペースでも行っています。今日は民泊の運営を通して、本流とは違う視点で、ホテル・宿泊施設についてを話せたらと思っています。

松下 私はエンブレムホテルというコミュニティホテルを運営する会社のホテルディレクターをしています。

力丸 西新井のやつですか?オープンの時に行きました!

松下 ありがとうございます!そのエンブレムホテルの創業、つまりメンバーのトレーニング、システム導入、マーケティングの部分とか、ホテルのスタートアップとして全般に5年間ほど関わってきました。ちょうど今月(2020年11月)から、(株)リンナスデザインというホテルのプロデュースとコミュニティデザインの会社を立ち上げたところで、来年からホテルの運営を金沢からスタートさせようとしています。BOOK AND BED TOKYOの池袋店は泊まったことがあります。泊まりに行ったというか、結局夜通し本を読んだので寝なかったのですが(笑)空間にお金だけを払って借りて、寝なかった。最高でした。

ー 皆さん3人3様で宿泊施設に関わっていらっしゃるのですね。コロナ禍をきっかけに「体験」や「リアルな遊び」という価値について様々な方が改めて感じていると思います。実際「ワーケーション」という概念も登場し、「遊びと仕事」の境界が曖昧になってきていますよね。そこで今改めて「宿泊施設とは?」を考える上で、例えば「遊び」という切り口から見て、宿泊施設は今後どういうあり方が可能だと思われますか?

「寝たくないホテル」=「遊び」だ!

松下 宿泊業を5年間やっていて思ったのは、今の時代は景色や情報を全てオンラインで集められる。画像も検索すれば出てくる。わざわざ時間を使ってどこかに行く、旅に行くっていうのは、「人にとって無駄な行為」だな、と感じる部分があります。でも、その無駄な部分にすごく楽しみが詰まっているのが、旅の醍醐味だと思います。旅=計算的じゃない、つまり対義語としての「遊び」。だから「旅」と「遊び」って親和性があって、自分が宿をやるならその要素を盛り込んで、「うわ〜生産的じゃない時間過ごしているな〜」っていうのを楽しんでもらえる時間を作りたいと思っているんです。宿、遊びっていうのはすごくマッチングしていると思うんですよね。

力丸 僕が最初のBOOK AND BED TOKYOのプランニングの時から思っていたのは、逆説的に「寝たくないと思わせるホテル」を作りたいと思っていて。僕がリッツカールトンの沖縄に泊まった時に、そこのベットで寝たかったのではなく、そこのバーがすごく楽しくて、もはやこのままここで寝たいわ〜って思ったんです(笑)この場合、「リッツカールトンに泊まりました」という体験の中で語られるのは、「あのベットがふかふかでのび太じゃなくても3秒で寝れたよ」という話ではなく、「あのバーが最高でこのまま寝たいと思った、サイコーだった」という体験だと思ったんです。それで、「寝たくないと思えるホテル」というホテルとして逆説的なものを攻めた。それが結果的にBOOK AND BED TOKYOになったんです。おそらく作る側からすると、機能的な遡及ばかりしてしまう、つまり駅からどれくらいの距離があるのか、また築年数が何年で、設備がどうあって、部屋がこう広いですと。それはそれで素晴らしいのですが、実は泊まった人の体験を聞くと「そこに行くまでの体験」、「チェックインするまでの体験」、「その中で起きた楽しい事件」の方が実はみんな楽しそうに語るんです。そういう実体験もあって、そもそもホテルは「泊まる」「寝る」ところではない、というのを考えてやってきています。だから「遊び」も「体験」の1つだと思うとしっくりするし、そもそもみんな実は寝るところだと思って行っているけれど、抽象化していくと、「楽しみに行っている」「休みに行ってる」という何かしらの「体験」をしに行くところなんだろうな、と考えています。

「遊び」がキャッシュポイントになる。「ホテル」という名はただの機能。

松尾 BOOK AND BED TOKYOへ行ったとき、衝撃を受けました。コンセプト的に面白いと思ったのはもちろん、デザイン担当も「suppose design office」ですごい面白いホテルだな、と感じた記憶があります。今BOOK AND BED TOKYOは、ホテルだけじゃなくて飲食業とかもやられていますよね?そこにはどのような意図や思いがあるんですか?

力丸 考えとしては2つあります。1つはビジネス的な側面としてキャッシュポイントをいくつか持っておくべきということですが、それはあくまでも後付けです。僕らはこのブランドをやっていく上で、ホテルだと思ってやっていないし、宿泊施設だとも思っていない。「BOOK AND BED TOKYO」という奴らがいて、プランニングもクリエイティブも、現場も、そういう人たちがいて、その人たちがやってる、結果的にただの宿泊施設。だから実体は、ホテルじゃなくて「提供をしている場」なんです。だからホテル事業がカフェもやっていてすごい!じゃなくて、「俺らだから普通だよ!」という感じでやっているんですよ。だからこそパジャマもこだわって作って2万円で売るし、どこかとコラボで服も作るし、Instagram上でアーティストとコラボでオンラインライブをやったりもしています。新宿では「EGO-WRAPPIN」さんを呼んだりしました。これらはホテルがやるとなると、「ヨイショ」って頑張んなきゃだけど、実はただ「BOOK AND BED TOKYO」っていう奴らがやってること。だからなぜやるのか?っていうよりは、ただ僕らがこうやったら楽しい、こうやったら素敵じゃん。という考えでやっていて、特別なことや違和感を持ってやっているわけではないんです。

松尾 今、中規模のホステルや民泊って宿泊でお客さんが取れなくなっている現状があるじゃないですか。ただ、そこにはいくつか生き残る道があるのかなって考えています。1つは「シェアハウス」。安定した収入を得るって言うのが1つの考え方です。もう1つは「マンスリー」。もう1つは僕が今やっているんですけど、「時間貸しで貸し出し」をする。最初は半信半疑でやっていたんですけど、そこに意外と需要があって。宿泊施設って泊まるだけじゃないんだな、と再認識したんです。飲食店にみんなで集まる代わりに、場所を借りてウーバーイーツとかでケータリングをして、女子会・誕生日会ができる。時間貸しってこのようなパーティ利用として遊ぶ要素もあるんですけど、最近は写真撮影スタジオやYoutubeの配信スタジオにも使われています。ただ宿泊施設と言う名前の箱があるだけで、実際に泊まっても成り立つし、時間貸しとして遊びの部分でもビジネスとして使えるな、と思ったんですよね。

松下 すごく賛成です。どういう風にブランドを体現するのか、どういう体験設計をするのかをどこまでこだわれるのか?って、生き残る・残らないの話ですごく大事だと思います。東京だとホステルという形で欧米系のバックパッカーの人たちが宿泊するための場所のような感じで取り上げられることが多いんですけど、エンブレムホテルの場合、地域の人に扉を開いて、例えばハンバーガー屋さんが中にあることで毎日常連客として人がそこに出入りするような場所を作っていて。実はBBQのレンタルスペースとしてもやっているんですよね。これがキャッシュポイントとしては結構大きくて。西新井周辺で100人くらいで飲食パーティができるところってなかなかないんですよ。

力丸 どこでやってるんですか?屋上?

松下 そうです。テラスがあるので。

力丸 いいな〜!(笑)

松下 キャッシュポイントとしても大事なんですけど、「どうやったらエンブレムらしい、『ワォ』体験を提供できるか」っていうのがいつも議論になっていて。地域の人に「西新井でこんなルーフトップBBQができるのか」っていう『ワォ』体験が提供できるよね。という発想からBBQのプランが出てきたりしました。BBQだけでなく、ハンバーガーもそうなんですけど、西新井で突然ホステルがハンバーガー屋を始めて、すごく本格的でボリューミーなハンバーガーが食べられる!『ワォ!』みたいな。これってすごく僕ららしい体験で、ちょっとインターナショナルな感じもするし、だからハンバーガーっていいよね、というところからスタートして、『ワォ』体験を設計したんです。独自の体験をいかに設計できるかということが、結果としてキャッシュポイントに繋がってくる。安定的な収益にも繋がっていく。体験設計で、僕らもBOOK AND BED TOKYOさんもそうだと思うんですけど、『ワォ』と感じてもらうことが「遊び」の部分なのかなと思います。

力丸 「ホテル」っていう名前を一回取っ払うことが大事なんでしょうね。

松尾 そう思います。

力丸 ジャンルとしてくくってもらってもいいけれど、自分たちがホテルだと思っていると選択肢が狭くなるかもしれないから、「ホテル」っていう定義、名前を一回捨てて「こういう楽しみ方をしてもらいたい」ということをどんどん詰めていって、結果何年後かに、ホテルっていう概念が世の中的には今とは違う捉われ方をしている状態になれば最高ですよね。

松下 まさに新しく立ち上げた(株)リンナスデザインでやっていきたいのが、地域の人の複合施設なんですよね。つまり「楽しい場所だね」って言いながらいろんな人が出入りするような施設で。地元の人が8割、宿泊客が2割のような状況を作りたいんです。それで地元の人が、「え、ここの上って泊まれるの?」といった場所を作りたいと思っています。

力丸 結構うちはそうなってますね。カフェは地域に住む人たちが結構来ていて「え、ここって泊まれるんですか!?」という状況になっています。

松下 やはりそうなんですね!Instagramのストーリーにアップされているのを見て「あ、これみんな泊まってないなー」と思っていました。それが最高なんですよね。

力丸 なんか、ホテルの定義付けを変えれるような気はしてます。楽しんでもらえれば、なんでもいいんですけどね(笑)

松下 宿泊所免許っていうスキームを使って、面白い場づくりをしている感覚なんですよね。

ー 近年、様々な境界が曖昧になってきて、そういった「くくり」のようなものが無くなってきていますよね。抽象化していくと場所や体験をデザインしていて、その中に泊まれる場所があるくらいのイメージという意味でいくと、「ホテル」という言葉は解体してしまってもいいかもしれませんね。地域の複合施設という話だと、コロナ禍になってそういう地域に根ざした場所って強いな、と改めて感じています。コミュニティがテンポラリーじゃないというか。やはりそういう部分って、ある種のリスク回避にもなるし、今後より一層必要な視点かもしれません。

「体験」と、「ひと」と。

ー 最後に、「泊まる・場づくり」という事に関わっていく上で、「やっていてよかった!」「これからも関わっていきたいと思わされた瞬間」、「自分がここにいる理由」などがあればお聞きしたいです。

力丸 僕が仕事をする上でワクワクする瞬間がいくつかあって、その中の1つが、お客さんが「楽しいぜー!すげー!」と感動してくれるポイントを作れること。あと昔から制作をやっていて思う事としては、「これムッチャかっこいい。」と言われる瞬間がやっぱり嬉しいです。クライアントや企業が喜んでくれるのはもちろん嬉しいんですけど、実際にそこで働いてる「人」たちをテーマにしてきた「BOOK AND BED TOKYO」を5年やって感じたのは、仲間の成長や喜び、結果を出してまた新たにファンがその人に付いていく光景を目にして、それがめちゃくちゃ楽しいということ。これって今後自分が仕事をしていく上で大切にしたいポイントだなって思いました。

松尾 僕が宿泊施設運営でやりがいを感じたのは、海外ゲストと実際に話したりご飯を食べに行った時でした。民泊だからこその体験かなと。最近では、民泊の一部を自分の事務所兼貸しスペースにしたり、ポップアップショップの場として貸し出したりしています。面白いのは、そこに数人の知り合いを集めて、オンラインセミナーやイベントを上映してみんなで見る会をやること。僕が呼んだ知人同士は互いに知り合いじゃないんですけど、この人とこの人が交わったら面白そうだな、というのを自分の中でチョイスするような会をたまにやっています。実際にその人同士が繋がって新しいことが始まったりとかするんですよね。こういうこと自体が1つのコミュニティの形成になっているなあ、と感じるし、やっていて面白いですね。

松下 僕は誰かの人生のハイライトになれる可能性があるということですかね。エンブレムホテルのエピソードで、ホテルのバーで出会ったフランス人とアルゼンチン人が、後日、NYで一緒に撮った写真をfacebookでタグ付け投稿して「結婚したよー」と報告してくれたことがあって。他には、うちの近くでカフェをやってる女性がいたんですけど、うちに宿泊していたメキシコ人の男性がその女性に恋をして、3回くらい口説きに行ったんですよね。残念ながらカフェは閉店したんですけど、メキシコにその女性は移住しちゃったんですよ(笑)誰かのストーリーを一緒に作る、そのお手伝いができることにワクワクというか喜びを感じて宿泊業をやっています。

ー 宿泊体験には、あらゆる出来事や体験が詰まっていて、だからこそ「ホテル」という言葉をはみ出した先に、人との繋がりや、新たなビジネスチャンスがある。「ホテル」という領域から広がる多くの可能性を感じました!本日はありがとうございました。

【最後に】
今回登場いただいた3名の活動や実績、企業情報はこちらからご覧ください。

▼松尾さんが主体となってまち回遊型の展示会「カタログのないものづくり展」が2020/11/20-22で行われました。この企画展は対談で話されていたように、近隣の宿泊施設、民泊施設、飲食店を巻き込む形で開催され、まさに「ホテル」という言葉を切り離した企画展となりました。 このレポートがオンラインサロン社外取締役のブログとして外部公開されております。
https://shagaitori.com/blogs/6b540227d240
▼BOOK AND BED TOKYO https://bookandbedtokyo.com 
▼Studio 8W https://www.facebook.com/alternativespaceStudio8W
▼LINNAS Kanazawa https://www.linnashotels.com

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